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VMDインストラクター 小森谷 明子さんを取材しました2014年1月

メーカーのショップブランディング戦略

VMDインストラクター 小森谷 明子さん

小森谷 明子さん

ミズノ株式会社

営業本部本部室

VMDインストラクター

メーカーのショップブランディング 3つの形態

 メーカーのショップブランディングとは、次の3つを指す。Aインショップブランディング B直営店ブランディング C個店ブランディング。

 まずAから語っていこう。インショップとは、ショップインショップとも言う。百貨店やGMS、大型専門店等のアイテム別フロアの中に置かれた、メーカーのコーナーのことである。そのコーナーは、メーカーが店構えしているかのようにデザインされている。例えば、百貨店のゴルフ用品フロアには、ミズノやシマノ、テーラーメイドやプーマがコーナーをつくり、ブランドロゴやマークを看板に掲げている。売場の壁や什器は、メーカーカラーに仕上げられている。ミズノコーナーは青で、プーマコーナーは赤というように。メーカーが用意したマネキンやPOPで商品展示スペースを設ける場合も多い。接客やレジは施設側が用意してくれるが、百貨店はメーカーが販売スタッフを出すことが普通だ。

  Bの直営店ブランティングに関しては、アンテナショップと呼ばれるもので、商品や新サービスに対する顧客の評価や要望を吸い上げる、ショールーム的な役割をする。店舗の外観、店内の床・壁・天井・什器などのショップデザインの他、ディスプレイやPOPなどもメーカー本位でつくられるので、街の大きな広告にもなりうる。最近は、全商品売上の14%を占めるアップルストア(※全米の場合)のように、メーカー直営店は収益の要にもなっている。

 Cは、昔からある個人経営の「個店」に、看板や什器、POPなどを提供して、メーカーデザイン仕様の店舗にする手法だ。CMの「日立のお店で」を思い出してみよう。日立の看板で店頭のひさしを覆い、個店名はメーカーのロゴより小さく付けた店舗だ。家電メーカー、パンメーカー、化粧品メーカーなど、いろいろな業界がやっているが、その規模は今、かなり縮小している。家電業界に関しては、ヤマダ電機などの家電量販店が全国を占拠したおかげで、個店はだいぶ少なくなった。化粧品店の場合は、規模は少なくなったが、検討している方だと言える。

  ブランディングのメリットから言うと、直営店>インショップ>個店の順にメーカーブランドを打ち出せるが、費用もその順にかかる。収益に関しては、インショップ>直営店>個店だ。場合によっては、地域の有力個店が直営店よりも収益が増すかもしれないが、大型量販店が稼ぎ出す収益は底が知れない。例えば、秋葉原のヨドバシカメラ1店舗の売上は、静岡県中の家電店の売上の合算よりも大きい。それほど大型量販店が跋扈する世の中になってきた。

 さて、このブランディングという言葉だが、「メーカーブランドを浸透させる作業」と考えよう。メーカー主体の品揃えだけでなく、店舗内のデザインテイストをメーカーブランドのテイストに近づける作業がショップブランディングである。ブラントのロゴやマーク、カラーを基調にした店頭・店内デザインを基調とし、店内はメーカーオリジナルの什器デザインと、国内外有名スポーツタレントを起用したPOPを多用し、クールでグローバルなテイストを醸し出している。ナイキなどがいい例だろう。中には、個店の床・壁・天井まで改装提案をし、実施するメーカーもある。個店はメーカー色に染まっていくのである。これがメーカー個店ブランディングの本質だ。

個店ブランディングは「共生」が キーワード

 AとBに関してのブランディング施策は、21世紀になった現在も引き継がれているが、Cの個店ブランディングに関してはだいぶ変わった感がある。それは、「日立のお店で」と看板をつけただけでは、大手家電量販店に勝てなくなったことに起因する。勝てないということは、個店の廃業を意味してしまう。個店が廃業すると、大型店と大型店のにある地域店がなくなってしまい、地域的なスキマができてくる。そこで、メーカーは「共生」という選択をした。

 つまり、「地域で生き残っていく手助けをメーカーがしますよ」ということだ。確かに、大型専門店は大量にメーカーの商品を売ってくれるので、メーカーにとっては助かる。しかし、家電にしろ、化粧品にしろ、メガネにしろ、地域の人々に密着したスタイルの個店は、この時代逆に重宝される。それは、対応がきめ細やかだからだ。テレビがつかなくなったり、パソコンがフリーズしたら、すぐに駆けつけてくれるのは個店であり、プロのアドバイスをしてくれる。このようなプロショップは、量販店の値段に対抗できないものの、付加価値を顧客に与えてくれるので生き残ることができる。

 だが、この生き残りも2世問題にぶち当たっている。つまり親の代で店は終わり、というケースが多発しており、地域密着店舗が瓦解し始めているのだ。メーカーにとっては、地域のサテライト店の役目を担う個店がなくなるのは痛い。特に、スポーツ用品店の場合は顕著で、学校の部活動や地域のスポーツ振興の旗手がいなくなるからである。それを以下に見てみよう。

ミズノの個店共生戦略

 大手スポーツ用品メーカー、ミズノ株式会社は、ウエアや靴・帽子・バッグなどのアパレル商材はもちろん、野球、陸上、サッカー、水泳・・・と特定競技専用商品をつくっている総合メーカーである。特に、特定競技専用商品は、地域の個店が拠点となって、取り扱われている。学校の体育着や部活動、企業や団体のチームに提供しているのだ。

 同社は、特定競技のプロショップたる個店に商品を納めるだけではなく、積極的に経営支援をしている。それは、以前は「MIZUNO SOZO塾」という店舗支援プロジェクトという形をとっていた。個店の店舗運営や経営・財務・人材教育など、店舗を活性化し高収益構造にするためのeラーニングをメインにした教育サービスだ。本誌でも4年前に紹介している。今は、そのプロジェクトは解散し、小売店への販促活動として営業本部本部室の業務になっているが、本質は変わっていない。

 そして今や、この個店経営支援施策が、2世問題を解決している。個店が2代目に店を引き継がせるときに、親から子への経営ノウハウの委譲は欠かせないが、今は昔と違う。「マーケティング」「ブランディング」「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)」など、現代は経営の仕方が変わった。データベースの構築やインターネットを駆使した広報の仕方など、IT化も進んでいる。つまり、親が子に経営ノウハウを譲ろうとしても、それは古い経営ノウハウになってしまい、子の役に立たない。だから、メーカーが先ほどの様な新しい経営手法を、親の代わりに子に伝授するしかないのだ。同社の個店経営指導には、世代交代の間にある問題解決の意味がある。

 そして、VMDも新しい経営手法に他ならない。VMDとはビジュアルマーチャンダイジングの略で、アメリカで生まれた売場づくりのノウハウである。百貨店やアパレル業界で生まれたこの技法は、個店の売場づくりの役に立つように、私がアレンジし、学校もつくった。私が主催しているVMDの学校「売場塾」がそうだ。36期を終えた今も、多くのメーカー営業支援担当が参加している。同社の小森谷明子さんもその一人だった。

コンサルティング営業育成のための VMDトレーニング

 彼女は以前「MIZUNO SOZO塾」のプロジェクトメンバーとして活躍していた。SOZO塾のカリキュラムの中に、VMDを持ち込んだのは彼女で、スポーツ店VMDに加工し、eラーニングで個店を教授した。SOZO塾解散後も、小売店販売スタッフ対象のトレーニング科目として、VMDを教えている。

 彼女は現在日本VMD協会正会員で商品装飾展示技能士でもあり、自らVMDコンサルタントとして、営業のつくった売場の評価・改善指導をし、お得意先や社員を対象としたセミナーの講師を勤めているのだ。下記は、前回のセミナー前に提出された課題だ。

店舗改善課題を記した報告書  セミナー参加者は、事前に得意先店舗の写真を撮影し、売場の現状と課題について報告する。彼女は報告書を集約し、参加者へレポートとしてフィードバックしたり、セミナーで店舗レイアウト・陳列・展示などの改善ノウハウを提供する。例えば、コップを使用したワークショップは売場塾の教育エッセンスを参考にしたディスプレイ構成の仕方を是正するトレーニングである。

 このセミナーを年に数回、社内向けに行うことによって、営業個人のVMD能力をアップさせているのである。というのは、メーカーの場合、社員は個店のコンサルタントにならなければいけない。商品を納入するだけでなく、売場づくり、販売促進、スタッフ教育、顧客管理など個店経営を円滑にする手助けが必要で、その役割は営業が担う。個店はコンサルタントを雇う資金的余裕はないので、こうしたメーカーのサポートは大助かりだ。メーカーとしては、個店とのパイプが太くなり、個店の売上が上がって自社の売上も増える。まさにウインウインだ。コップを使ったディスプレイトレーニング

新しい販促のカタチ 「エデュケーショナル販促」

 実は、こうしたVMD研修は、以前は外部研修講師に依頼するパターンが多かった。今もVMDの専門的な科目である、カラー陳列や服のコーディネート、POP制作などを外部講師に依頼することはあるが、自社の研修講師として、メーカー社員自らが講義を行うことも多くなった。

 この誌面でもたびたび紹介している、菅公学生服梶A潟Vャルマン、ハリウッド鰍ネどのメーカーは、VMD担当を社内につくり、オリジナル研修企画を作り上げ、自らが弁を揮っているケースである。メーカー自らが先生となり、お得意先である小売店に売場づくりのノウハウを教えていく・・・私は、これを「エデュケーショナル販促」と呼んでいる。メーカーが自社の売場づくりを自らするのではなく、他社も含めた店舗全体の売場づくりを小売店に指南し小売店が行うという、新しい販売促進と位置付けている。

 どうしてこれが販促かというと、VMDノウハウを伝えることにより、自社の売場を拡大できるからだ。売場づくりは店舗をリニューアルすることにつながる。その際、店舗レイアウトの変更や新しいコーナーの新設、ディスプレイスペースの確保、売れない商品の打ち切りなどが作業として行われる。そのタイミングで自社製品棚を拡大したり、自社商品展示スペースやPOP取り付けを加味することにより、店舗内シェアを増やすことができるのである。

 もっとも、他社製品を完全に駆逐し、自社製品を露骨に増やす提案はしない。個店はいろいろなメーカーの商品があってこその店舗なので、それを踏まえた上での全体最適を提案するのである。これは、アメリカP&Gが開発した、カテゴリーマネジメントという理論に似ているが、あれはメーカーの量販店対策。こちらは、家族経営の個店を生き延びさせるための対策だ。

  こうしたエデュケーショナル販促の場は、今後も津々浦々で増えていくはずだ。なぜかというと、大手量販店だけで全商圏をカバーするのは不可能だからだ。前出の通り、地域には、すぐ来てくれるサテライト店が必要不可欠だ。サテライト店を存在させることによって、メーカーは日本の隅々の地域まで自社流通を築くことができ、ひいては、老若男女すべての人に自社製品を届けることができる。少子高齢化の社会において、サテライト店はコンビニのようでもあり、掛かりつけの医者でもあるのだ。

エデュケーショナル販促は 個店ブランディングの領域に

 このように、個店ブランディングを進めながら、自社ブランドを訴求してきたメーカーだが、個店自体のショップブランディングを手掛けていくメーカーも多くなってくると予言する。今のままでは、山田商店や佐藤商店にメーカーブランドのテイストを付加しているだけだが、これからは山田商店自体のショップブランディングを提案していくメーカーが増えていくに違いない。行っているメーカーもすでにある。

 前述のCのタイプでは、山田商店も佐藤商店も渡辺商店も同じメーカーブランドテイストで染めて、全国を緩やかにつなげていく個店戦略だが、それでは、山田商店も佐藤商店も、見た感じは同じになってしまう。ネット社会の昨今は、地域の距離的な差は関係なくなってきて、遠くにあった山田商店も佐藤商店も近くになり、競合になる。山田商店自体がブランドにならないと、生き残っていくことはできなくなってきた。いつまでもメーカーに依存しているだけでは生き延びることはできないだろう。現にNB商品よりもPB商品が隆盛になってきていて、どこで買っても同じNB商品を扱っている店舗はいずれ淘汰される時が来るからだ。

  そこで、個店独自の個性を前面に出し、その店でしか得ることのできない品揃えやサービスを提案するのが、今後のメーカー個店施策であろう。変な話だが、メーカーの枠を超えたコンサルタントのような役割が必要になっていくのである。

 もっとも、すべての個店に個性や固有の品揃えやサービスがあるとは限らない。なければ、それを身につけるコンサルティングをメーカーがして、努力を促す。努力しない店は、資生堂がすでにやっているように、見切っていくということになる。優秀な店舗だけにメーカーが指導を注ぎ、共に勝ち残っていく「共生」が叫ばれている。努力をせずにただ単純にメーカーの商品を仕入れているだけの店は、淘汰の波にさらわれるだけだ。

 メーカーのこうしたコンサルティング施策はプロジェクト的なものから、マーケティング部、広告部等とならんで、主要な部署になるだろう。名付けて、リテールコンサルティング部だ。その中でVMDは大事なコンサルティング項目になることを願ってやまない。

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