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VMDインストラクター 乾 大輔さんを取材しました2012年3月

自分で求めて会社も認めたVMDインストラクター

VMDインストラクター  乾 大輔さん

乾 大輔さん

株式会社シャルマン

シャルマン販売部 セールス

シニアVMDインストラクター

ノーリスク社会はなくなった

 VMDの学校「売場塾」を主催している私は、多くの卒業生と会っている。半分が会社でVMD業務についている方、半分がVMDの専門家として自営している方だ。彼ら彼女らと話すと、会社員であれ、自営業者であれ、時代は変わったな・・・と思う。会社員は現状がこのまま続くとは考えていないし、自営業者は「今」ではなく将来を考えて行動することに気をかけている。

 株式会社シャルマンの乾大輔さんもそんな一人だ。今期、ソニーやNECなど一流メーカーが軒並み大損益を出している電機業界だが、メガネ業界も他人事ではなく、市場規模が6200億をピークに2010年は3800億に落ち込んでいる。中国製品を安価に販売するディスカウント店の勃興や、コンタクトレンズの普及など諸処問題で、市場減退の憂き目を体験している。

 「会社員だからといって、将来が保障されている時代は終わりました。市場のパイは狭まっています。会社が生き残っていくのはもちろんのこと、自分がどう生き残るかを考えていかないと」

 担当地域のメガネ店を営業する日々を通じて次のように感じていた。

 メガネを卸してもメガネ店が生き残らなければ、我々も生き残ることができない。ディスカウント店の攻勢で、旧来からある専門店は退店を余儀なくされ、市場縮小に拍車をかけている。今のメガネ店は価格しか見ていなく、行う策は、チラシやDMに格安価格のメガネを載せてお客様を引きつけることしかない。・・・

 いつもなら、こうした販促に協力してPOPやディスプレイツールを提供したり、販促用戦略商品を送り込んだりしていた。ただ、こういうことだけをしていっても小売店はじり貧で、いつか終わりが来てしまう。すると、自分も会社も終わりに近づく・・・という危機感が大きくなってきた。

 かといって、好きで飛び込んだメガネ業界。辞める選択はなく、業界をなんとか活性化させたいと思う。

 「自分は何ができるんだろうか」

悶々とした日々を送っていた時、転勤命令が下った。東京から大宮支店へ赴任、埼玉、栃木地域担当になったのだ。赴任直後は少し余裕があったので、自分探しの時間をつくった。たどり着いたのが、売場塾だった。

 「VMDは前々から関心がありました。関心のあることは今やろう、ということですぐに売場塾を受講しました」

 売場塾は彼にどのような影響を与えたのだろうか?

売場塾生のその後の進路

 VMDの学校「売場塾」を主催している私は、多くの卒業生と会っている。卒業生は、会社員とフリーの方が半々だが、会社員の方は、卒業後の進路を次のパターンに分けることができる。

1.VMDの担当になる。今の職務と兼業。

2.VMDの専任に。

3.VMDの専任に。かつVMD部署をつくる。

4.VMDと関係ない部署に異動。

5.VMD担当でない現状のまま。

6.会社を退社、フリーになる。

7.会社を退社。VMD目指して転職。

8.会社を退社。他社のVMD担当に。

などだ。

 どのケースがいいとは言えず、人によって価値感が違うだろう。ただ、うまくいっているな・・・と私が思うケースは、2と3だ。会社がVMDを重要な経営戦略と認めたわけで、部署の専任や責任者となった卒業生も達成感があるはずだ。

 卒業から1年半経った時、彼に会う機会があった。彼はこの1と2の真ん中というポジションに進んでいた。営業兼VMDインストラクターになり、ここ半年で240人の受講生、16回のセミナーを全国で抱えるに至った。

お得意先専門店を集めての講義

 売場塾卒業後、覚えたことを担当小売店に伝えようと、売場づくりのノウハウをスライドにまとめ、iPadの電子紙芝居を携え、お得意周りをしたのだ。それが徐々に顧客・社内で認められ、営業とVMDの兼業という、特殊任務につく。彼の名刺を見ると、文字通り「営業」と「VMDインストラクター」という肩書きが名前の上に並んでいる。同社でこうした職務は初という。

 「最近は、お得意様向け展示会でも講演するようになりました。今はVMDをいかにわかりやすく小売店主に伝えるか悩んでいます」

 彼と話していると、固定の枠から脱したいという思いが伝わってくる。職務や会社という枠を超えた何かを求めてやまないようだ。そのせいか、異業種交流にも積極的で、売場塾の交流会や勉強会の常連になっている。

iPadで「紙芝居レクチャー」

化粧品や家電、アパレルや食品など、異なる業界のVMD担当の話に耳を熱心に傾ける。そこから吸収したことを自分のVMDに肉付けし、オリジナルなものにしていく。新たな理論としてセミナーやOJTに昇華させているのだ。

 「今のメガネ店は、価格に意識が傾いています。だから、お客様も価格に傾倒してしまうんです。売場をもっとよくして、メガネをもっとファッショナブルでいて健康に役立つ、クオリティあるものにしたい。そうすることで、グレード商品が売れ、お店も繁栄していく。そんな流れを作りたいです。もちろん、顧客もメガネでファッショナブルになるはずです」

 VMDの大切さを会社にやっと伝えることができた。今度は業界全体に伝えていきたい。そう思って、最近は、「メガネVMD研究所」というサイトをBlog、facebookで立ち上げた。仕事やプライベートで感じたVMDを書きこんでいる。 お得意先店舗で売場改善を指示

 「日常感じたVMDについて発信していくことは、業務の振りかえりになるとともに、知識の整理にも役立ちます。これからもBlogやfacebook、TwitterなどでどんどんVMDを語って行きたいと思います」

 そう話す彼の顔は、ベーシストとしてロックを奏でている時のような、純粋無垢な顔になっていた。前出の3の進路になることを期待してやまない。

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