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VMDインストラクター 太刀川 亜希子さんを取材しました2012年2月

ディスプレイクリエイターからビジュアルマーチャンダイザーへ

VMDインストラクター 太刀川 亜希子さん

太刀川 亜希子さん

ハリウッド株式会社 経営企画部

マーケティング室 商品企画担当

やりたいことって?

「やりたいことってなんだっけ?」

 おおよその日本の社会人がふと思う。会社に入って勤勉に働いて、年収を上げてマイホームを建てて・・・。こんな毎日の狭間、ふと振り返ったら、上記の言葉が出てくるのではないか。

 太刀川さんを見ていると、やりたいことはある程度実現の方向に向かっている気がする。彼女を3年前に取材した時は、化粧品会社ハリウッド鰍フ研究所にいて、ボランティアでショールームのディスプレイをしていた。小売店向け売場づくり「ディスプレイレシピ」を営業部向けに発行していた。本業は研究員だったので、このような活動は勤務時間外に自発的に行っていた。

 それが1年半前には本社に異動、商品企画担当になり、VMDに携わるようになった。「私にとって、VMDはひとつの業務になりました。最近はインストラクターとしての仕事も多く、当社の美容部員を集めてVMD講習会を行う機会が増えました」

 美容部員は、通称BI(Beauty Instructor)と呼ばれ、化粧品会社にとって重要な販売の要だ。BI教育するのはメーカーとして当然のことで、教育のメインは商品理解と伝達、そして接客だ。しかし、最近は売場づくりに力を入れる化粧品メーカーが多く、同社も必要に迫られている。ハリウッド化粧品は、販売チャネルが老舗百貨店や専門店が多く、旧態依然の売場を活性化するのが急務だった。お客様にとって心地よく過ごしやすい売場は、SCや大手百貨店が先行しており、地方百貨店や老舗百貨店、そして商店との格差が拡大してきている。

郊外研究所から六本木ヒルズへ

 それを解決するために、彼女に白羽の矢が立ったのだ。神奈川県にある研究所から六本木ヒルズの本社に異動命令を出したのは、同社社長だった。

「たまたま今のポジションにいた女性の産休のため、私が任命されたのです」と彼女は話すが、こうなったのも「ディスプレイレシピ」のおかげで、研究所から本社営業部に3年以上、誰にも指示されず一人もくもくと送り続けたことが社長の目に入っていたことは明らかだった。

 このレシピは今も脈々と続けられていて、本社から全国営業所を経由して各店舗に発信する視覚的な販売促進マニュアルになっているという。

「本社に異動してから、レシピの幅がグッと広がりました。商品展示だけでなく、VPやPPなどフォーカルポイントの設定、什器レイアウト、POPの設置方法など、売場づくり全般をアドバイスするようになりました」

 「ディスプレイレシピ」が「VMDレシピ」という、同社店舗全体を料理するマニュアルに進化した。しかも、レシピだけでなく、前述のようにレシピを媒介として直接、売場の販売員であるBIにレクチャーする機会が増えてきたのだった。

 「今まで、ディスプレイをうまくつくる・・・ということだけに囚われていましたが、売場づくりを口頭で説明するほど難しいものはないと実感しています。VMDという言葉自体、販売員は知るはずもなく、わかりやすい言葉に置き換えてお話しするように心がけています」

 最近は社外のVMD仲間と積極的に交流している。当社の主催するVMDの学校「売場塾」の卒業生に合うのもそのひとつ。違う業種・業態・取扱ブランドが違うVMD 関係者の話を聞くのはとてもためになるという。

 「自分の行っているVMDの活動がまだまだ狭い範囲だということがわかります。VMDは売場の売上を上げることが最終目標。数字をベースとしたVMDは、華やかなディスプレイと一線を画します。ディスプレイクリエイターとビジュアルマーチャンダイザーの違いがそこにあることを実感しています」

 どちらかというと、造形や創作に興味を持ってきた彼女。クリエイターとして、ウインドウやショーケースのディスプレイを率先してつくってきた。POP制作も好きで、同社ブランド商品のPOPづくりを自ら買ってでていた。個人としても、社外のディスプレイやPOPのコンクールに入選する常連だ。

 そんな中、実際に百貨店の同社売場に赴任し、営業部員やBIといっしょに売場づくりを推進し始めた。売場づくりを手掛けた後で、現場スタッフから「お客様が入店するようになった」「お客様の滞在時間が増えた」という声を直接聞けるのは、かつてない喜びだという。

 「普段は本部にいて、現場に行く機会はたまにしかありませんが、売場に行ってBIの喜んでいる姿を見ると感極まります。この仕事をやっていてよかったな、とつくづく思う瞬間です」

 ディスプレイクリエイターがビジュアルマーチャンダイザーに進化する日は間もなく来る、そんな予感がした今回の取材だった。

六本木ヒルズ ショーウインドウ

 着任して1年半経った2011年12月に彼女が制作した、六本木ヒルズのハリウッドビューティプラザのショーウインドウを紹介しよう。

ハリウッドビューティープラザのエントランス
ハリウッドビューティプラザのエントランスに設けられた大ウインドウ。広報宣伝担当から依頼されて2週間で完成させた。ディスプレイツールのほとんどが彼女の手づくりだ。
ハリウッドビューティープラザのトルソー
トルソーは彼女所有のもの。バラをひとつひとつ寸分の狂いもなく整然と貼った。社員だけでなくディスプレイ仲間にも制作を手伝ってもらった。
ハリウッドビューティープラザのユニットボックス
ウインドウはユニットボックス3体からなっている。中央のユニットに「女はいつも楽しく美しく」というメイ牛山のスローガンが見える。
サテンとオーガンジーのドレープが美しい
サテンとオーガンジーのドレープが美しい。水の中から美しい女性が現れる様をモチーフにした。
主役である商品を魅せる展示
主役である商品を“魅せる”展示も欠かさない。こちらはRanimesという高級化粧品。
ディスプレイの見栄えをチェックする太刀川さん
ディスプレイの見栄えをチェックする太刀川さん。 ハリウッド化粧品自らがヒルズのショーウインドウ制作をしたのは今回が始めてという。
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