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VMDインストラクター 梶 恵美子さんを取材しました2011年1月

VMDは、将来の可能性のひとつ

VMDインストラクター 梶 恵美子さん

梶 恵美子さん

VMDインストラクター

 フード・スタイリストという職業を知っているだろうか?スタイリストとは、商品を撮るにあたって、被写体に映るディスプレイ用品を選択・調達し、スタジオ等でセットする人のことを言う。ポスターやパンフレットなどの商業広告、雑誌やテレビ等マスメディアで活躍している。フリーの方もいれば、企業に属している人もいる。スタイリストは、商品や業界によってさまざまなジャンルがあり、アパレルの場合はファッション・スタイリスト、家具や雑貨の場合はインテリア・スタイリストといい、食品の場合はフードスタイリストという。

 私も、広告会社時代はいろいろなスタイリストを起用した。お茶のパンフレットをつくる時は茶道や着物に通じている人に頼んだり、ファッション専門店のテレビCMを撮る場合は、衣服のコーディネートやメイクができる人、インテリア会社のカタログを作るときは、インテリアに精通している人に、大変お世話になった。

BLTバーガー

 フード・スタイリストに関しては、今やファッションやインテリアと同様、需要が増している。デパ地下やエキナカには、スイーツ店や総菜店があふれ、色鮮やかなマカロンや団子、サラダや弁当は、人々の目を楽しませてくれる。

 料理に関するテレビ番組や雑誌、書籍はウナギ昇りに多くなり、インターネットも加わって、私たちはところどころで、皿に盛りつけたおいしそうな料理を目にする。この裏方といえるのが、フード・スタイリストで、料理や食材、商品をおいしそうに見せるために日夜活動しているのだ。

 梶恵美子さんは現在に至るまで、そんなフード・スタイリストとしての業務や、食に関わるデザイン業務を多数こなしてきた。

「デザイナーなんて言われると恐縮してしまいますが、私の場合は早い話し「なんでも屋」なんです。私が所属している今の会社も、以前の会社も食品を扱う会社でしたが、撮影用料理のスタイリングの他に、パンフレットやメニュー表・POPなどの印刷物や、商品パッケージのデザイン、新店舗や展示会のパースづくりなど、なんでもやってきました」

シーザーサラダサンド

 彼女の言う二つの会社のうち、ひとつはフードコンサルティングの会社で、ベーカリー店舗の立ち上げや経営指導をメインに行って来た。もうひとつの会社は、現在勤務している食品メーカーで、コンビニやスーパー向けのチョコレート菓子の商品企画や、パッケージ、パンフレットなどのデザイン業務を担当している。いくつか彼女の制作した販促物を見せていただいた。こちらは、以前の会社で制作した、ベーカリー店で配布する為のレシピカードだという。

 このどの部分を彼女がやっているのか聞くと、

@シーンセッティングと、必要なディスプレイ用品の収集

A皿への盛り付け

B写真撮影

Cコピー書き

DPOPデザイン

などだった。

 つまり、調理以外はすべて彼女が一人で行っていたのである。なるほど、通常だと、スタイリストは@とAで業務終了だが、カメラマンから広告制作まで広くこなしていたのである。

 「実は、それだけではないんです。ホームページの制作や管理、展示会のブース・ディスプレイ、お得意先の店舗デザインなどもやっていました。私が所属していた会社はそんな大企業ではなかったので、何でもやらなくてはいけなかったんです(笑)」

 もともとは、OA機器商社のCADインストラクターだったという。製造業や建設業の設計部署を相手にCADソフトの提案業務を行ったり、研修やスクールで講師をしていた。

 どうして、CADから食品になったのか? 「どうして、食品関係の仕事になったかと言いますと、お得意先の設計士の方に感化されたからです。私の役目は、CADソフトの使い方を説明することだったのですが、CADを使って家や店舗のデザインをされる設計士の仕事に深く感銘しました。私も、自分でモノを作ってみたい・・・と思うようになりました」

 意を決して会社を退職。1年間、インテリアショップや住宅展示場でアルバイトをしながら、インテリアコーディネーターやカラーコーディネーターの資格を取った。早速、その資格を活かしたいと、ベーカリー店コンサルティング会社の入社試験を受けパスした。

 入社した会社は、自らベーカリーショップを経営する傍ら、他店の立ち上げや経営指導を行っていた。営業品目は店舗開発だけでなく、商品開発、広告・販促、人材教育まで多岐に及んだ。社員25名の小規模なので、当然一人一人の業務は多岐にわたり、店舗デザインを提案するだけでは終わらなかった。

 パンフレットやメニュー表、看板やサイン、ホームページなど、時には、スタッフの名刺や店舗の封筒やショッピングバッグ、パッケージなどのデザインもこなさなければいけなかった。

 とはいえ、会社にはデザイン経験者がいない為、仕事を教えてもらえる環境にはなく、とにかく自分でやるしかなかった。イラストレーターやフォトショップについては、マニュアルを見ながら操作を覚えた。カメラマンを頼むコストや時間的な余裕がない時は自分でカメラマンをかって出た。一眼レフカメラを購入し、自宅で何度も料理を撮影してみた。料理がおいしそうに見える写真づくりのコツは、3.4件仕事をこなした後でやっと会得できた。

「とにかく、やりながら覚えていく・・・という感じでした。土日もカフェや飲食店を回って、こっそりメニュー表やPOPを撮影することもありました」

 そのうちに、ネット検索で、世田谷ものづくり学校内に「スクーリング・パッド」という教育機関があることを知った。スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を展開している潟Xマイルズ社長の遠山正道氏や、新進気鋭のクリエイティブディレクター・箭内道彦氏が参画している、新しい感覚の学校だった。興味を抱くとすぐに、レストランビジネスデザイン学部とデザインコミュニケーション学部の生徒になり、休日にスクール受講を始めた。

 この学校のいいところは、先生業ではなく、起業家または職人として実際に活躍している方が講師となっているので、説得力があった。飲食店を経営するということは、ただ単に商品がよいというだけでなく、人や空間、コミュニケーションや情報発信が必要だということを改めて痛感した。 「私がその時やっていた仕事のすべてが授業に入っていました。そのため、将来やりたい仕事の目標みたいなものがぼんやりと見えてきました」

 その内に、展示会における自社ブースのディスプレイも担当するようになった。ディスプレイについては、今までやったことはなかったが、来店客においしそうに見せる為に、かごやトレーなどの陳列用品を吟味した。また、従来のパン屋の備品にはこだわらず、インテリアショップでかごを購入したり、インテリア雑貨のテイストを取り入れるなど、お客様目線ではこういう風に見えた方がいいな・・・と自分の感覚を信じて作業していった。

売場パース

「もともと、気持ちいい空間で食事をする・・・ということが好きだったんです。ベーカリーショップも例外ではなく、焼き立てのパンを買うのにふさわしい空間とは何か?を常に考えるようにしました。レンガ造りのかまど、こおばしい外皮の匂い、ふっくらのコッペパン、おいしそうなきつね色・・・。そんな気持ちいい視覚的な材料を、お店のディスプレイに反映させたいと思いました」

 こちらは、そんな思いが詰まった店舗パース。 なるほど居心地よさそうなお店だ。

チョコレートのPOP

VMDとの出会いは、そんなときだった。ディスプレイ技術を確立させるもの・・・をネット検索で探していた時に「VMD」という用語にあたった。

 おもしろそうだな・・・と思い、VMD専門会社が行っているVMDの講習会やアクセサリーのディスプレイ実技制作に挑んでみた。

「意外と、ディスプレイは難しいことがわかりました。インテリアコーディネーターの資格は持っていても、ディスプレイはまた別の知識が必要。VMDを深めるにあたって、基礎となるコツが必要だと悟りました」

  現在は、売場塾というスクールでVMDの修練を続けている。VMDをしっかり覚えて、売場作りを理解する事で、売れる為の商品企画やパッケージデザインにも役立てたいという。

パッケージ

 こちらは、昨年発売されたチョコレートの写真。小売店へ向けの企画書や、ホームページにも使用したという。

 こんなにかわいいお菓子がコンビニで販売されていたのだ。商品の企画やパッケージデザインも彼女が担当し、撮影も彼女自身が行った。愛用しているカメラはオリンパスE−520とのこと。

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