店舗診断はVMDインストラクターだけではなく、中小企業診断士などの経営コンサルタントがよくしているコンサルティング手法です。
店舗診断の方法で、よくあるのがチェックリスト法です。
チェックリストを持って短時間で売場を回り、加点方式や○×式で記入するものです。
チェック項目は、採点範囲により10~40位と幅がありますが、毎回同じ項目をチェックすることによって、項目ごとに改善の進行具合を確かめることができます。
VMDを初めて導入した会社や、VMDコンサルタントとして独立したばかりの方にとって、チェック法は採用しやすく、ミステリーショッパーなどの調査会社でもなじみがあります。
私が教鞭をとっている売場塾でももちろん、基本講座でチェックリスト演習をしています。フィールドワークではチェックリストをもとにお店をオリエンテーリングしています。
ただ、このチェックリスト方式、実は漏れがたくさんあるんです。
例えば、下記のチェックリストをつくったとしましょう。
- 店内見通しはいいか。
- 店頭VPのテーマはわかりやすいか。
- 店頭から見て、売場の区切りは明確にわかるか。
- 陳列は正しく分類され、くくられているか。
- 商品のフェイスは見やすくなっているか。
- 店内PPのテーマはわかりやすいか。
- マグネット売場は店内に設置されているか。
- 通路幅は来店客に適した広さになっているか。
- POPは規則正しく売場に設置されているか。
- お店のクリンリネスは保たれているか。
と、とりあえず10項目書きましたが、じゃあこれをすべて守れば、うちのお店のVMDはパーフェクトかというと、そんなことはありません。
漏れがやたらあるんです。
例えば、
- 照明が暗い個所があるが、それはチェック項目にない。
- 字が読めないPOPがたくさんあるが、それはチェック項目にない。
- そのブランドらしからぬ什器のデザインだが、それはチェック項目にない。
- ディスプレイ構成がバラバラな箇所があるが、それはチェック項目にない。
- トイレットペーパーの横に高級化粧品が来ていて売場のつながりが変だが、それはチェック項目にない。
などと、数え上げればキリがありません。
じゃあ、チェック項目を100位にしてそれを毎回チェックすればいいんじゃない?ということになるとします。
それでは1週間しか持たないでしょう。
毎回、チェックに時間がかかりすぎ、継続的ないからです。
そこで、想起法の登場です。
想起法とは一言でいえば、VMDの六法全書の中からルールに違反している項目を抜き取り、「この売場はここがルール違反になっていますよ」と、改善点を指摘する方法です。
VMDのプロであるVMDインストラクターは、頭の中に売場づくりの六法全書が入っているので、売場を見ただけで「ここが悪い」というのがわかります。
この六法全書、どのくらいのルールが入っているかというと、基本55のルールが入っています。
さらに基本の進化系として、追加したルールがあり、その数は100位。
しかも項目は毎年更新・追加しています。
なんだ、結局100じゃん、と思うかもしれませんが、想起法というのは、売場を見て、頭の中の100項目のうち、必要と思うものを取り出しさえすればいいのですから無駄がありません。
100のうち、20だけ改善項目が必要かもしれないし、50あるかもしれない。
毎年、いろいろな店舗診断を遂行していて、「これは項目に入れたほうがいいな」という新しいルールを作り続けているので、今のところ、漏れはないようにできています。
例えば、最近照明の問題に関しては、下記のルールを設定しました。
・全体照明
→明るさ
→色
→照明器具
→健康・安全性
・部分照明
→明るさ
→色
→照明器具
→健康・安全性
・店外照明
→照度・輝度
→意匠
→健康・安全性
売場塾では、改善項目のことをフレームといい、別名「売場づくりの型」と言っています。
余談ですが、最近は「きれいさ」もフレームに入れました。
以前は売場をきれいにしておくのは当たり前のこと、で改善項目に入れなかったのですが、けっこう汚いお店も多いことから、スタイリング・クリンリネス・快適性という型を追加しました。
話をまとめると、想起法とは下記です。
- 売場づくりの六法全書を頭の中の引き出しに入れておいて、それから売場を見る。
- 売場の悪いところを頭の中の六法全書の該当項目から取り出す。
- それをスタッフなり、クライアントに、わかりやすくまとめて指摘する
こんな感じです。
すると漏れはありません。
このしくみを当社は「フレームワーキング」と呼び、商標も取っています。
最後にひとこと。
売場づくりの六法全書のことをガイドラインといい、ブランドごとにガイドラインは違う、つまり売場づくりのルールは違う・・・ということを念頭においてください。
(vmd-i協会事務局)