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群化の法則

「群化の法則」活用の仕方

群化の法則とは

群化の法則というものがあることは以前述べました。

●群化の法則

群れを同族と認識する、人間の心理から成り立つ法です。
商品の陳列がバラバラでも、色や柄、サイズやカタチなど同族商品を同じものとして認識できる人間本来の慣性がベースになってます。

群化の法則は、もともとグラフィックデザインをするときによく使う法則です。
ポスターやパンフレット、新聞や雑誌などの誌面をデザインするときにこの法則を使えば、読者にとって理解しやすく、美しい紙面に変身します。

しかしこの法則は売場づくりにすこぶる役に立ちます。
商品の群れをくくりと捉え、くくりをデザインすることによって個性的なディスプレイになり、売場を美的センスあふれるものにすることができます。

群化の法則は図の7つの法則から成り立っています。
ひとつひとつ解説していきます。

7つの法則とは

①近接

4つのカタマリが認識できます。
4つの各々のカタマリはカタチや色が違いますが、タイトに固まっており、カタマリの周りに余白があります。
だから、4つのグループに分けられていると認識できるんです。

②類同

類同とは同じデザインのモノが近くにあることを言います。
①の近接と違うところは、同じデザインのカタマリの周りに余白がないことです。
しかし、色が同じ仲間がタイトに集まっていることはすぐに認識できます。

③よい連続

よい連続とは、外形(フィギュア)が繰り返されていることを言います。
③の図は、Lの字と横一線のフィギュアが繰り返されています。
各々の色や形は違うのに、繰り返されているのが認識されます。
それは、Lの字と横一線のフィギュアが一致しているからなんです。

④閉合

わかりやすく言えば、カッコで四角や丸が閉じられているのがわかると思います。
右の図は( )で、左の図は「 」でひとカタマリというのがわかります。
これを「くくり」といいます。
商品がくくられていると、それでひとカタマリというのが認識されます。
なので、商品をグルーピングしたいとき、なにがしかの方法でくくると、商品が視覚的に分類されます

⑤共同運命

個人的には「共同運命」が群化の法則では一番面白いと思っています。
ディスプレイに運命があるなんて、なんと詩的でロマンチックな言葉ではないでしょうか。
図の⑤共同運命を見てみましょう。
左側の緑の四角は、上に行くほど小さくなっていく運命にあります。
右側の肌色の四角と丸は、「隣は必ず違うカタチ」という運命で配置されています。

⑥面積

ランチョンマットの上にコーヒーカップが載っているような図です。
左の四角は円よりもかなり面積は大きいです。
にもかかわらず、丸が主役として目立っています。
なぜかというと、四角い中にぽつんと丸があるからです。
四角は確かに丸より大きいが目立ちません。
丸が四角より前にあるように見え、丸は四角より面積が小さいのにもかかわらず目立ち

これは、人間はフォーカルポイント(注目点)に左右される性質だからです。
ワイシャツの中の大きいシミが目立つように、ぽつんと小さい何かに注目してしまう性質なのです。
⑥面積はうまく人間の慣性を突いている思います。

⑦対称性

商品を左右対称に置くと、ディスプレイは安定して見えます。
ただし、左右だけでなく、上下対称、斜め対称もあるので注意しましょう。
左図は左右対称、右図は斜め対称です。
対称性という定義なので、必ずしも同じ商品が対称に置かれなくてもよいです。
だいたいカタチが同じ、だいたい色が同じ、だいたいサイズが同じでもよいです。

群化の法則はミックスして使う

さて、陳列や展示に「群化の法則」を使ったディスプレイの例を見てみましょう。
大事なことは、ディスプレイづくりにおいては、7つの法則を単独で使うのではなくミックスして使うことです。
あなたは週末、リビングでコーヒーを飲んでいるとします。
「群化の法則」を活用してカフェテーブルをつくってみました。

a

これは③よい連続と④閉合のミックスです。
まず板に注目しましょう。
板が連続していて、「よい連続」です。
 食器が板の上にすべて載っている姿が「閉合」です。
シンプルでナチュラルなテイストのディスプレイ。

b

これは③よい連続と④閉合、⑦対称性のミックス。テーマは四葉のクローバー。

c

これは、②類同、④閉合、⑤共同運命、⑦対称性の複合型
線香花火をモチーフにしたディスプレイだが、火花の周りは丸いものが固まっていて「類同」。
火花においてはピンクのヨコは必ずパープルなので「共同運命」。線香花火やコーヒーカップは「対称性」があります。

d

これは、③よい連続、④閉合、⑦対称性のミックス
ディスプレイテーマはフラワー時計。

e

これは、⑥面積、⑦対称性のミックス。ビリヤードをモチーフにしたディスプレイですが、キューの先のボールがとても目立つ。これが⑥面積の応用です。

f

これは、④閉合、⑤共同運命のミックス。テーブルの木枠でディスプレイを包んでいる、大きな「閉合」だ。
そしてコーヒーカップ以外はすべてテーブルに埋まっているという共同運命です。
テーマはSDGs。

g

これは、④共同運命 ⑦対称性のミックス。
白黒反転する、という共同運命です。
コロナのグラフをモチーフにしました。

h

これは、④閉合 ⑦対称性。テーマはパーティになっています。

まとめ

今回は、デザイナーによく知られている「群化の法則」をディスプレイに応用し解説しました。
「群化の法則」は秩序の法則と行っても過言ではありません。
売場に秩序がなければ、ジャングルになってしまいます。
かといってあまり秩序がありすぎると在庫置き場になってしまいます。

ディスプレイは秩序と自然の中庸に位置させると、個性的で美的感覚に優れたものになります。
このことを常に意識して、既存のVMDメソッドと群化の法則を連動させて使いましょう。

群化の法則を会得したい方は、オンライン「センスアップセミナー」で詳しく教授しました。
興味ある方は次回ぜひご参加ください。
●センスアップセミナー ディスプレイ構成 PART2

(VMDインストラクター協会事務局)

カラフルなディスプレイ

ディスプレイ美的センスアップの秘訣

美的センスの三要素

あなたがディスプレイをつくるとします。
ディスプレイをアート作品と思っているあなたには下記の3つの要素が求められます。

  • 審美性esthetics
  • 創造性creativity
  • 演出性expressiveness

審美性について

審美性とは、見た目の美しさのことです。
女性なら八頭身、小顔、色白。
男なら逆三角形ボディの細マッチョみたいな感じでしょうか。

あなたの身の回りの調度品を見てください。
リビングの花瓶も、目覚まし時計も、下着を入れるキャビネットも審美性を感じませんか。

リビングの花瓶は鶴の首のように細くキュッと締まっていますし、目覚まし時計は左右対称の楕円形になっています。
下着入れのキャビネットは湾曲していてかわいいです。

審美性は、下記の美的形式原理がベースになっています。

  1. 調和 ハーモニー harmony
  2. 均衡 バランス balance
  3. 対称 シンメトリー symmetry
  4. 比例 プロポーション proportion
  5. 対比 コントラスト contrast
  6. 律動 リズム rhythm
  7. 階調 グラデーション gradation

詳しくは
●美的形式原理 をクリック。

美的形式原理を取り入れると審美性が増します。
例えば、先ほどの花瓶は調和と対称がよいため、審美性が感じられるのです。

売場塾の生徒作品を例に解説します。
例えば、これはフツーのディスプレイ。

これに美的形式原理のシンメトリーを加えてみます。
すると、下記の様になり、審美性が増しました。

もし、あなたの作ったディスプレイに審美性を加えたいのなら、美式形式原理を応用しましょう。

今度はコップのディスプレイ。
これも売場塾のワークショップの生徒作品。

うーん、なんかずんぐりむっくりで肥満系のディスプレイですね。
これを美しくしてみましょう。

ライザップのようにシェイプアップしました。
ドクターXみたいにきれいな八頭身ですね。
縦に長い三角構成は、りりしくすっきりとしています。

OKですか?審美性の感覚分かったと思います。
ディスプレイのシルエット、色、素材、配置などに審美性を加えると美しくなります。

創造性について

創造性とは、クリエイティブなことです。
それは他に類のない個性的なものを創り出す能力のことです。

他に類を見ない個性的なディスプレイとはなにか。
それは、「ほかで見たような気がする」ディスプレイでなくて、「こんなの、あるんだ」という、唯一無二のディスプレイを言います。

広告で言えば、こんな感じ。
デパートは普通、モデルに服を着せた写真を広告に出しますが、このモデルは服を着ていません。
「こんなの、あるんだ」という唯一無二の広告になっています。

ディスプレイの例を見てみましょう。
例えば、この陳列は遠くから見ると、サンタクロースに見えます。
とても創造的ですね。

こちらは、コップの三角構成ですが、フツーの三角構成とちがい、なんだか動き出しそう。
芋虫がもそもそしている感じがして、とても創造的です。

あなたがもし創造性のあるディスプレイをつくりたいのなら、他人をマネするのではなく、唯一無二のオリジナリティを追求するとよいでしょう。

演出性について

次に演出性なのですが、テーマやシーンの臨場感を出す能力のことです。
臨場感とは、「まるでその場にいるような感覚」を言い、下記の様なことを言います。
・まるで戦場にいるような臨場感のある映画
・遊園地でデートという臨場感があるディスプレイ
・高いビルの屋上に立っているような臨場感あるVR

演出性があるディスプレイとは、まさに「まるでその場にいるような感覚」なんです。
例えば、「遊園地でデートという臨場感があるディスプレイ」にするにはどうすればいいのか。
それには、まずマネキンに着せる服を「遊園地でデート」に合うようなテイストにすることです。

  • ドットや幾何学というカジュアルな柄の服
  • ブライトトーン、ビビッドトーンといったカラフルな色の服
  • ミッキーやキティのようなキャラクターもの
  • スカートはマーメイドスカート、フレアスカート、マキシスカートなどカジュアルなもの

などと「遊園地でデート」に着ていく商品をチョイスします。

それが終わったら、プロップスやPOPのようなディスプレイ用品で演出性を高めます。
・POPは遊園地の写真を背面パネルとして起用。
例えばメリーゴーランドとか、動くコーヒーカップの写真にする。
・プロップスは、遊園地をほうふつとする小道具にする。
例えば、風船、ハートの杖、観覧車のオブジェ、ピエロのお面などなど。

下記の缶ジュースに演出性を加えてみます。

演出的なディスプレイになりました。

お花畑を演出してみました。
香りのよさそうなジュースになりました。
これがディスプレイの演出性です。

ディスプレイに美的センスを加える要素、わかりましたでしょうか。
それが

  • 審美性esthetics
  • 創造性creativity
  • 演出性expressivenes

なんです。

当社では3か月に一度ディスプレイセミナーを行っています。
●ディスプレイセミナー
美的センスあるディスプレイを実際につくってみましょう。
日本橋の売場塾会場にてお待ちしております。(^^)

(VMDインストラクター協会事務局)

Jクルーの店内

ディスプレイの定義をつくろう

当社は3か月に1回、ディスプレイセミナーを日本橋で開催していて、VP,PP,IPをお教えしていますが、意外と覚えきれていない方がいます。

●VMDディスプレイセミナー

そんなわけで、今回はVPとPPの定義についてお話しします。
まずはディスプレイ用語、VP,PP,IPの説明をします。

●VP(ビジュアル・プレゼンテーション)
店前を歩いているお客様を立ち止まらせる大きな店頭のディスプレイのこと。

●PP(ポイント・プレゼンテーション)
店内のお客様を回遊させる、比較的大きなディスプレイのこと。

●IP(アイテム・プレゼンテーション)
お客様が選択購入しやすいように陳列されている商品ディスプレイのこと。

さて、VPを定義してみましょう。

「VPはフロア商品を代表するディスプレイ」
「VPはフロアの打ち出し商品のディスプレイ」
「VPは店舗の商品を代表するディスプレイ」
「VPは店舗の打ち出し商品のディスプレイ」

と定義1を書いてみました。

次に

「VPの展示商品はフロアのIPから選択する」
「VPの展示商品はフロアのIPの中になければいけない」
「VPの展示商品は店内のIPから選択する」
「VPの展示商品は店内のIPの中になければいけない」

と定義2を書いてみました。

すると、VPに展示している靴は、IPとしてこのフロアのどこかになければいけません。
VPに展示しているバレエのドレスも、IPとしてフロアのどこかになければいけません。

今度は、PPの意義1を書いてみます。

「PPは売場の商品を代表するディスプレイ」
「PPは売場の打ち出し商品のディスプレイ」

次に、PPの意義2を書いてみます。

「PPの展示商品は売場のIPから選択する」
「PPの展示商品は売場のIPの中になければいけない」

とすると、この売場のPPはOK。

アパレル店のPP

これもOK。

お菓子売場のPP

これもOK。

お菓子テーブルのPP

これはダメです。

コーヒー器具のPP

これもダメです。

紳士服店のPP

どうしてダメなのか、わかりますか?
詳しく解説します。

コーヒー器具売場を見ていきましょう。
確かにPPとしている上部の四角い箱に入った商品は下段のIPにあります。

しかし、PPにあってIPにないものもあります。
それは、一番上の中央の箱に入っている丸いサーバーです。
これが下にないんです。

ですので、PPとしては定義に外れるので×。
丸いサーバーを下げるか、IPに丸井サーバーを入れます。

次に、紳士服売場を見てみましょう。
まずオブジェがありますが、これはPPではありません。飾り物です。
シャツがたたんで置いてありますが、下段にはありません。
ですからPPとしてはバツです。

あなたはこう思うでしょう。
「そんな固いこと言わないで、見逃してやって」。

いえいえ、見逃すことはできません。
見逃すこと イコール 定義は意味をなさない・・・ことになるんです。

定義はそんなに甘くないことは、新型コロナウイルスのガイドラインを見れば一発でわかります。

例えば、コロナの第3.4ステージの定義は下記です。

新規感染者数は1週間で人口10万人あたり15人以上ならステージ3、
25人以上ならステージ4。

「あー、今日東京都は25人だった。せっかくずっと24人だったのに。
見逃して。第3ステージのままにして。一人くらいいいじゃない」

と言ったあなたに対して、国民の怒り心頭は頂点に達することでしょう。

そうなんです。
コロナ対応のガイドラインは何のためにあるかと言うと、国民の命を守るためにあるんです。

VMDのガイドラインは命にかかわらないかもしれないのですが、あなたの担当しているブランドの命にかかわること間違いなしです。
ガイドラインによる定義をうやむやにしたまま、店舗を運営していくとやがてはショップブランドの瓦解につながります。

さて、改めてPPの定義を見てみます。

PPの意義1。
「PPは売場の商品を代表するディスプレイ」
「PPは売場の打ち出し商品のディスプレイ」

PPの意義2。
「PPの展示商品は売場のIPから選択する」
「PPの展示商品は売場のIPの中になければいけない」

これもまだうやむやな言葉がありました。
それは「売場」という言葉です。

売場と言う定義があいまいだとやっぱり、PPはフロアにあるものならなんでもござれになってしまいます。
なので売場の定義をしっかりつくることが必要です。

・ここでいう売場とは、MDグループを指します。
・MDグルーブとはテーマに基づく商品群のことで、
 壁面なら5スパン以内、島什器なら3スパン以内とする。
・例えば、スポーツアパレルならば、ランニング、トレーニング、サッカーなどをMDグループと言う。
・例えば、ドラッグストアならば、風邪薬、コンタクト用品、メイク器具などをMDグループという。

こうすると、「売場」の定義が明確になっているので、6スパンを超えたIPはPPとして展示してはいけない。
自動的に、他のMDグループに属する商品はPPに入れてはいけない。
ということになります。
図をご覧ください。

PPの定義

棚の赤い部分は別MDグループの什器ですので、そこの商品が5スパンのMDグループのPPに入ってしまうと×ということです。

なのに、「他の売場の商品もPPに入ってしまっているけど、まあいいでしょう」
とVMDインストラクターのあなたが指導してしまうと、もうこの時点で定義は崩れてしまうし、ガイドラインは意味をなさなくなってしまいます。

そして店舗スタッフも「PPに使う商品は店内にあるものならなんでもいいんだ」ということになり、ガイドラインが意味ないものになってしまうんです。

たかがガイドライン、されどガイドライン。
これがあるおかげで、コロナ禍のオリンピックもスムーズに遂行できるんです。

そして、ガイドラインは更新していくということも忘れないでください。
「どうしてもこのままではうまく売場を運用できない」ということがあれば、協議の上、改定するといいでしょう。
すると、スムーズに行かなかったところが改善されていきます。

だいたいわかりましたか。
VMDのディスプレイはあいまいなところがあるので、都度定義をしっかりつくってあいまいさをなくしていくことが必要です。

(VMDインストラクター協会事務局)