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ホノルルクッキーカンパニーの店頭

白壁を直して来店客を増加させよう

1. オーケストレーションとは壁面の集合ディスプレイ

今回はオーケストレーションの話をしましょう。

オーケストレーションとは、壁面の集合ディスプレイのことです。
もともと「オーケストレーション」は、楽隊編成の意味です。
わがオーケストラは、どこにピアノを配置して、どこにバイオリンとクラリネットを配置するか・・・などなど楽隊の指揮者から見たポジションを決めることを言います。

同じように、店内の壁を構成する要素をどのように配置するかが、オーケストレーションという手法なんです。
オーケストレーションは、壁面の集合ディスプレイと言い換えてもけっこうです。
壁面ディスプレイの要素は下記です。

  • 壁そのもの
  • 商品陳列
  • 商品展示
  • POP
  • プロップス(装飾品のこと)

論より証拠。
オーケストレーションの実際を見てみましょう。

これはホノルルクッキーというお菓子店。
通りからお店を覗いた写真です。
店内右側の壁を見てください。
クッキーの箱がたくさん並んでいるのがわかりますよね。
詳しくはわからないけれど、なんか楽しそうなお店。
入ってみようかな~って気になりますよね。

実際に入ってみましょう。
上の写真はドアを開けたところ。
見事な壁面の集合ディスプレイが目に飛び込みます。
いろんなクッキーが壁一面にディスプレイされている~。
ウキウキしちゃう!!って感じになりますよね。

これがオーケストレーションの効果です。
壁面の集合ディスプレイって店頭を歩いている客を店内に引き込む作用があるんです。

ホノルルクッキーカンパニーはハワイのチェーン店です。
そのVMDの魅力はこちらで詳しく解説ています。
●店舗視察のコツ~お菓子店事例

2. どんな店がオーケストレーション効果があるのか?

今度はオーケストレーションが発揮されているいない店舗を見ましょう。
上の写真はセブンイレブン。
会社の帰りに撮影しました。
奥の壁が白くなっているのがわかります。

お店に近づいてみましょう。
奥の壁面に何もないのがわかりますね。
強いて言うと、POPがちょこっと貼ってあるくらい。
このお店の壁面什器は1.8mまであるけれど、そこから上は白なんです。

これはなぜでしょうか。
なぜ、先ほどクッキー店みたいに壁いっぱいにディスプレイしないのでしょうか?
それは二つの理由があるからです。

1つ目の理由として、コストがかかってしまう点です。
コンビニは、客がさっと入ってさっと出る店です。
その時生活に必要なものを売っているライフライン店舗なので、多くは目的買いです。
オーケストレーションの運用には、手間暇がかかります。
・ディスプレイをつくる時間とスキルなどの人件費
・ディスプレイ資材コストと、それを集めるコスト

これはコンビニの低コスト運営に逆行します。

ただでさえ、人がいなくて忙しいのに毎週毎週壁面ディスプレを考えたりつくっている暇はないということです。
オーケストレーションに手間暇かける位だったら、販売の自動化とかレジ周りの効率改善にコストかけたいというのがオーナーの気持ちでしょう。

2つ目の理由としては、コンビニは環境VMDとは縁がない店舗ということです。
環境VMDは別名エンバイロメンタルVMDといい、店内空間にブランドの世界観を与える手法で、菓子店や雑貨店、セレクトショップなどが好んで使っています。
MDはもとより、ショップデザインやMDP(ディスプレイ)を使って店内空間にブランドの世界観をつくりあげます。
例えば下記のような店です。

  • 無印良品
  • スリーコインズ
  • ユニクロ
  • フランフラン
  • アフタヌーンティー
  • ゴディバ
  • 212キッチンストア
  • ディズニーストア
  • ハンズ
  • ルルレモン etc

これらの店は、ただ商品を買う店ではなく、店内回遊してお気に入りの商品を探したり、買って生活を楽しいものにしたい商品が満載です。
コンビニのように間に合わせの商品を買うお店ではないのです。

そのような店は、店内のデザイン環境を気分よいものにしなければいけません。
ただの白い壁で四方を覆うようなお店にしたら、会議室で商品を買うようなさみしい気持ちになります。

スリーコインズを通りから見てみましょう。
壁がディスプレイで埋め尽くされていますよね。
なーんか、掘り出し物がありそうな予感!!ちょっと寄ってみよう。
という気になりませんか。

こんな感じで、気持ちをわくわくさせるようなライフスタイル店舗はオーケストレーションを用いて壁面で来店客を魅了させる仕掛けが必要なんです。

逆に、コンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケット、ホームセンターのような「生活必需品」をメインとしたライフライン店舗は白壁でもいいかもしれません。

ただし、同じドラッグストアでもテイストを重んじる店は、白壁にデザインを施しています
例えば、アインズアンドトルペです。

写真を見てわかる通り、カテゴリーネームとイラストを施したオシャレなデザイン。
ファッション感度の高い丸井や西武のフロアにも出店しているほど、若い女性に人気のコスメのセレクトショップです。

3. オーケストレーションの3つの区分

オーケストレーションの構成要素は、大道具・小道具・商品です。
壁面を舞台と思ってください。

  • 大道具は、壁面のデザイン、そして什器
  • 小道具は、什器に載せるプロップスや販促物
  • 商品は、陳列や展示に使用する商材一式

ハワイのクイックシルバーの壁面を見てみましょう。
大道具部分は壁面のウッドフェンス。
そして天井のサーフボードのオブジェ。

小道具部分は、写真やポスターのフレームとサーフボード。
商品部分は、PP(商品展示のこと)としてのトルソ、そしてその下のTシャツとショーパンの陳列がそうです。

この3つの構成は、通常なら下記の様に担当が分かれているはすでず。

  • 大道具部分・・・店舗デザイナー
  • 小道具部分・・・デコレーター
  • 商品部分・・・・VMD

上はディズニーランド内のお土産ショップ。こちらも同様です。
壁面は3セクションに分かれていて、壁の上から言うと、下記になります。

  • 大道具部分・・・アーチ型壁面とキャラクターの造作物は店舗デザイン部署が担当。
  • 小道具部分・・・最上段のPPディスプレイ棚は、デコレーター担当。
  • 商品部分・・・その下の商品陳列は、VMD担当。陳列の研修をキャストにしている。

オーケストレーションはまさに部署間の共同作業といっていいでしょう。
無印良品がなぜ完璧までに全国のオーケストレーションを構築できるかは、部署間の共同作業によるルーティーンがなされているからです。

4. オーケストレーションのさまざまなタイプ

先ほど述べたように、大道具・小道具・商品という区分で担当者が分かれているのが、オーソドックスな体制ですが、例外はたくさんあります。

IP(商品部分)を壁面の下部基準とした場合、下記のタイプがあります。

  1. 壁面上部もIPタイプ
  2. 壁面上部はインテリアディスプレイタイプ
  3. 壁面上部は広告スペースタイプ
  4. 壁面上部は質感のある壁タイプ

写真を見ながら説明します。

1. 壁面上部もIPタイプ

これは、天井まで陳列がずっと続いているタイプ。
無印良品やラコステが普通に行っています。
無印良品は天井近くまで布団やレトルトカレーを陳列していますし、壁面を覆っているラコステのポロシャツ売場は色のグラデーションが効いています。
商品のボリューム感が出ている上に、色の帯がきれいなので、来店客はついつい壁面に注目してしまいます。
写真は、ラルフローレンのウオーターフォール。
色の配置はグラデではなくてチェッカー状にしてメリハリをつけています。

2.壁面上部はインテリアディスプレイタイプ

商品の世界観を象徴するオブジェやフレームなどをディスプレイするタイプ。
単純に造花や壺を展示している例(上の写真)もありますが、商品を絡ませて生活スタイルを表現したり、風景写真を掲示して生活のシーンなどを表現する方法などがあります。
下記はポスターを使用した、アパレルショップのインテリアディスプレイの例です。

ポスターは必ずしも商品と直接結びついてはいませんが、生活のシーンやテイストを売場に与えています。

3. 壁面上部は広告スペースタイプ

大きなPOPを壁面上に掲示して、遠くの客を引き付けるタイプです。
例えば、上の写真は年賀状の広告になっています。
これはプリントショップのオーケストレーション。
また、駅や空港の土産店のようにお菓子の広告を電照広告形式で掲示している例もあります。

メガネやスマホなど商品が小さい場合、最上段は広告スペースにした方がよいでしょう。
例えば、メガネを一つ二つ最上段にPPとしてディスプレイしてもほとんど遠目でわかりません
その場合メガネのフレームを大写しにしたブランド名入りのポスターを掲示した方がインパクトがあり、遠目でもわかります。

4. 壁面上部は質感のある壁タイプ

壁の質感を出すために、壁をそのままにしておくタイプです。
壁をわざと見せます。
単なる白壁ではなくて、テラコッタや板張りの壁は、壁そのものの質感(マテリアル)が来店客に伝わり、商品ブランドやショップブランドのテイストを助長させます。
例えば、上の写真は米国アンソロポロジー。ライススタイルショップです。
キッチン用品の売場ですが、凹凸のある土壁がボヘミアンなブランドテイストを助長させています。

5. 白壁を改善して入店客を増やす

私たちはお店のリバイスをするときに、「白壁」をどうやって魅力的にするか、よくプランします。
壁自体をディスプレイとみるオーケストレーションは、今話した方法で店の前を歩いているお客様を入店させることができるからです。

いままで数々の店舗にオーケストレーションを導入して、入店率や売上をアップさせてきました。
30%の入店率アップ、売上20%アップなど、具体的な数字結果をもたらした店舗は多いです。

オーケストレーションは、下記のセミナーで詳しくお話ししています。
●商品陳列の仕方

このセミナー、来年(2023年)になりますが4月と7月開催予定です。
白い壁面を直したいと思っている方、ぜひお越しください。

(VMDインストラクター協会事務局)

ディスプレイのフォーカルポイント

フォーカルポイントで客目線を釘付けにする

人間は太古の昔から、視界の中に何か異質物があると身構えます。
そうすることによって、最速で敵から逃げたり仲間を助けたり、時には食べ物を見つけることができるのです。
現代人の生活においては、そんなに危険なことはありませんが、人間はその太古の性質を遺伝しているために、何か活動をしている時に視線に異質物が入ると気になってその方向を向くのです。
これがフォーカルポイントの原理です。

VMDの世界では、売場のあるポイントにお客様の目を意図的に誘導する時に、フォーカルポイントを設定します

例えば壁面の売場の場合。
壁面全体が単なる陳列の連続だと、フロアを歩いているお客様は気に留めません。
壁が周りの背景に溶け込んでいるからです。

そんな時に壁面の中にフォーカルポイントを設定すると、お客様はつい壁面に視線を注いでしまいます。
フォーカルポイントが視界に入って目立っているからです。

上の写真を見てください。
Tシャツ売場ですが、
●女性の顔
●中央のハンガーに吊るされている展示

これがフォーカルポイントです。

これがなかったら、壁面にフロア内のお客様の視線が行く頻度は少なくなっていたことでしょう。

さて、フォーカルポイントの作り方は下記の6つです。
ひとつひとつ説明していきます。

1.色がそこだけ違う

上図を見てください。白いところに目が行くと思います。
この白いのがフォーカルポイントです。
人は色が他と違うところに目が行きます

上の写真を見てください。ブルーの列の靴に目が行くと思います。
それがフォーカルポイントです。

2.サイズがそこだけ違う

上図を見てください。大きい四角に目が行くと思います。
この大きい四角がフォーカルポイントです。
人はディスプレイの中の面積の大きいところに目がいきます

上の写真を見てください。
最上段のジーンズに目が行くと思います。

3.顔がある

上図を見てください。顔に目が行くと思います。この顔がフォーカルポイントです。
人は、ディスプレイの中に顔があると、ついつい見てしまいます。
先ほどのTシャツ売場と同じです。

4.角度がそこだけ違う

上図を見てください。ひし形に目が行くと思います。
このひし形がフォーカルポイントです。
人はディスプレイの中に他と違うカタチがあると、それを注視します。

上の写真を見ると、壁面中段のフライパンに目が行きますよね。
フライパンが丸くて、四角い他とカタチが違うからです。

5.そこだけ飛び出ている

上図を見てください。飛び出した四角に目が行くと思います。
この隆起したものがフォーカルポイントです。
人は、群れから突出しているものに目が行きます。
先ほどのTシャツ売場と同じです。

6.そこだけ離れている

上図を見てください。離れた四角に目が行くと思います。
この離れた四角がフォーカルポイントです。
人は、群れから離れているものに目が行きます。

上の写真を見てください。
一番奥のポットに目が行きますよね。
このポットだけ、群れから離れているからです。

まとめ

わかりましたでしょうか。フォーカルポイントの原理。
フォーカルポイントを売場に意識して設置すると、お客様の視線はそこからスタートします。

あとは、リーディングラインを使って売場をまんべんなく見ていただくと、買い上げ率アップに貢献します。
リーディングラインに関しては下記を参考にどうぞ。
●リーディングライン

また、フォーカルポイントについては、センスアップセミナーでも解説してますので、興味ある方はぜひお越しください。(^^)

●センスアップセミナー 商品陳列

(VMDインストラクター協会事務局)

マリンブルーのバッグ展示

ディスプレイの装飾品「プロップス」とは

プロップス(props)とは、演劇の小道具のことです。
ディスプレイの世界では、装飾品と訳しますが、小道具の方がしっくりきます。
というのは、VMDを担当する者にとって、売場は舞台であり、役者は商品だからです。
役者を際立たせるために、舞台の世界観を与えるために、プロップスを使うのです。

上の写真はワイキキ商業施設のウインドウディスプレイです。
バッグが商品なのだが、商品以外はすべてプロップスです。
背景の波の写真、サーフボード、切り株、砂。すべてプロップスです。

プロップスがあるおかげで、ディスプレイの主役である商品が引き立ちます。
この場合は、バッグがマリンブルーなので、ハワイの海をイメージした下記のプロップスで満たされています。

  • タペストリーの波
  • サーフボード
  • 海岸に打ち上げられた流木
  • 海岸の砂

青いバッグに関心がない客でも、こんなウインドウを見たら、「マリンブルーのバック、すごくいい」とバッグに興味を持ってしまいます。
プロップスは買い物に影響力を持んです。

プロップスは世界観を創造する

さて、プロップスは4種類あり、それぞれ下記の役目があります。
上図と照らし合わせてみてください。

  • マテリアル  →世界観を包む
  • ガーランド  →世界観をつなぐ
  • パーチクル  →世界観を醸し出す
  • オブジェ  →世界観を象徴する

世界観とは、商品や企業ブランドの世界観、商品を使用するシーン、使用者の心象風景などを指します。
先ほどのマリンバッグの世界観は、マリンリゾートを彷彿とさせる臨場感でした。

このディスプレイに使用されているプロップスは下記の様に分類されます。

  • マテリアル  →床の砂、タペストリー
  • ガーランド  →なし
  • パーチクル  →なし
  • オブジェ  →サーフボード、流木

この4大プロップスについて、[種類][使い方と役割]の順に解説していきます。

マテリアル

マテリアルとは、素材のことです。
下に敷いたり、ディスプレイの背後に吊るして使います。

[マテリアルの種類]
砂、板、布、トタン、芝、紙、アクリル、ターメリック、コルク、画用紙・・・などなんでもよい。

[使い方と役割]
基本的な使い方は、写真の砂のように、ディスプレイの下に敷いたり、タペストリーとして商品の背後に吊るしたりする。
役割としては、ディスプレイ内に大風呂敷のごとく広く使用して世界観を包む。色や素材、使う面積、マテリアル同士の組み合せなどで表現をつくる。

例えば、このディスプレイのテーマは「青い空と春霞」。
和紙とビニルクロスがマテリアルです。
このように2つ以上の素材を掛け合わせるとよいです。
テイストミックスと言います。

上のディスプレイはナチュラル感が増していると思います。
テーマは 「春うらら」。
板と和紙のテイストミックスです。

ガーランド

ガーランドとは、ドイツ語で花輪のことです。
売場では、花輪の他にブドウやツディ、モンステラなど植物のつるを使うことが多いです。
しかし、ディスプレイ用語としては「長物(ながもの)」と捉えてください。
長い物なら何でもよいです。下記のものは大方、手芸店で手に入ります。

[ガーランドの種類]
・植物のつる
・紙テープ
・リボン
・ロープ
・キラキラ
・糸
・くさり

[使い方と役割]
商品のまわりを軽く巻き、ディスプレイの上を這わせる。商品以外にも、オブジェやライザーに巻いてもよい。商品と商品、商品と他のディスプレイ用品をつなげることによって、テーマやブランドの持つ世界観をもつなげる。

例えば、商品を含めたディスプレイ用品を写真のようにリンクさせます。
すると、ディスプレイに一体感が生まれ、ビーチでモーニングコーヒーを楽しんでいる世界観につながります。

パーチクル

パーチクルとは英語で粒子のことです。
ディスプレイ用語としては、小さい装飾品を指します。
オブジェに比べて小さいという意味です。
単体で使わず、複数使うのが条件です。
上の写真ではヒトデや貝殻がパーチクルです。

[パーチクルの種類]
 下記の様に小さい粒ならなんでもよい。
・ビー玉
・貝殻
・花吹雪
・紙吹雪
・もみじ
・雪の玉 など。

 ところが、大きくても散布して使うなら、下記のものでもガーランドになる。

・トランプ
・クリスマスボール
・松ぼっくり
・栗
・ギフト箱
・おかずピック
・ストロー など。

[使い方と役割]
ディスプレイスペースいっぱいに散布することで、商品の置かれている環境を醸し出せる
例えば、貝殻を散布すると、ディスプレイ環境は海岸になる。桜の花吹雪を散布すると、花見のシーンになる。

上の写真は松ぼっくりなので、アウトドア感が出ていると思います。

オブジェ

パーチクルが小さい粒だったら、オブジェは大きな置きものです。
駅前にあるアート作品をオブジェというので、イメージがわくと思います。
ディスプレイの中では、商品の次に目立つ装飾品です。

[オブジェの種類]
パーチクルに比べて大きくて自立するものなら、なんでもよい。
●インテリアディスプレイ用オブジェ
 壺、花瓶と花、プランター、彫刻、デコイ、ボトル、盃、トロフィーなど、インテリアショップ、雑貨店などで手に入る置物。
●コモディティ品
 サングラス、コップ、時計、ノート、手帳、パソコン、タイプライター、電話機など一般的に手に入るもの。
●造作品
 コラージュ、アッサンブラージュ、モビールなどオリジナルでつくったアート作品。

[役割と使い方]
オブジェを置くことにより、ディスプレイのテーマがわかりやすくなる
そして、テーマやシーン、イメージを象徴してくれる。
例えば、ハートのオブジェなら愛を、王冠なら権威を、花なら可憐さを象徴してくれる。

上の写真は公園をイメージしています。
花時計が公園を象徴するオブジェになっているのがわかります。
商品の世界観を象徴するときは、商品の近くに置いてください。
ぴったりと商品にくっつけてもよいです。
商品の臨場感を高めることができます

だいたいわかりましたでしょうか。
プロップスの使い方。
センスアップセミナーでは、「プロップス活用体系」と称して詳しくレクチャーしています。
より深く学んで、プロップスを自分のスキルにしましょう。

●センスアップセミナー「プロップス活用体系」

(VMDインストラクター協会事務局)

群化の法則

「群化の法則」活用の仕方

群化の法則とは

群化の法則というものがあることは以前述べました。

●群化の法則

群れを同族と認識する、人間の心理から成り立つ法です。
商品の陳列がバラバラでも、色や柄、サイズやカタチなど同族商品を同じものとして認識できる人間本来の慣性がベースになってます。

群化の法則は、もともとグラフィックデザインをするときによく使う法則です。
ポスターやパンフレット、新聞や雑誌などの誌面をデザインするときにこの法則を使えば、読者にとって理解しやすく、美しい紙面に変身します。

しかしこの法則は売場づくりにすこぶる役に立ちます。
商品の群れをくくりと捉え、くくりをデザインすることによって個性的なディスプレイになり、売場を美的センスあふれるものにすることができます。

群化の法則は図の7つの法則から成り立っています。
ひとつひとつ解説していきます。

7つの法則とは

①近接

4つのカタマリが認識できます。
4つの各々のカタマリはカタチや色が違いますが、タイトに固まっており、カタマリの周りに余白があります。
だから、4つのグループに分けられていると認識できるんです。

②類同

類同とは同じデザインのモノが近くにあることを言います。
①の近接と違うところは、同じデザインのカタマリの周りに余白がないことです。
しかし、色が同じ仲間がタイトに集まっていることはすぐに認識できます。

③よい連続

よい連続とは、外形(フィギュア)が繰り返されていることを言います。
③の図は、Lの字と横一線のフィギュアが繰り返されています。
各々の色や形は違うのに、繰り返されているのが認識されます。
それは、Lの字と横一線のフィギュアが一致しているからなんです。

④閉合

わかりやすく言えば、カッコで四角や丸が閉じられているのがわかると思います。
右の図は( )で、左の図は「 」でひとカタマリというのがわかります。
これを「くくり」といいます。
商品がくくられていると、それでひとカタマリというのが認識されます。
なので、商品をグルーピングしたいとき、なにがしかの方法でくくると、商品が視覚的に分類されます

⑤共同運命

個人的には「共同運命」が群化の法則では一番面白いと思っています。
ディスプレイに運命があるなんて、なんと詩的でロマンチックな言葉ではないでしょうか。
図の⑤共同運命を見てみましょう。
左側の緑の四角は、上に行くほど小さくなっていく運命にあります。
右側の肌色の四角と丸は、「隣は必ず違うカタチ」という運命で配置されています。

⑥面積

ランチョンマットの上にコーヒーカップが載っているような図です。
左の四角は円よりもかなり面積は大きいです。
にもかかわらず、丸が主役として目立っています。
なぜかというと、四角い中にぽつんと丸があるからです。
四角は確かに丸より大きいが目立ちません。
丸が四角より前にあるように見え、丸は四角より面積が小さいのにもかかわらず目立ち

これは、人間はフォーカルポイント(注目点)に左右される性質だからです。
ワイシャツの中の大きいシミが目立つように、ぽつんと小さい何かに注目してしまう性質なのです。
⑥面積はうまく人間の慣性を突いている思います。

⑦対称性

商品を左右対称に置くと、ディスプレイは安定して見えます。
ただし、左右だけでなく、上下対称、斜め対称もあるので注意しましょう。
左図は左右対称、右図は斜め対称です。
対称性という定義なので、必ずしも同じ商品が対称に置かれなくてもよいです。
だいたいカタチが同じ、だいたい色が同じ、だいたいサイズが同じでもよいです。

群化の法則はミックスして使う

さて、陳列や展示に「群化の法則」を使ったディスプレイの例を見てみましょう。
大事なことは、ディスプレイづくりにおいては、7つの法則を単独で使うのではなくミックスして使うことです。
あなたは週末、リビングでコーヒーを飲んでいるとします。
「群化の法則」を活用してカフェテーブルをつくってみました。

a

これは③よい連続と④閉合のミックスです。
まず板に注目しましょう。
板が連続していて、「よい連続」です。
 食器が板の上にすべて載っている姿が「閉合」です。
シンプルでナチュラルなテイストのディスプレイ。

b

これは③よい連続と④閉合、⑦対称性のミックス。テーマは四葉のクローバー。

c

これは、②類同、④閉合、⑤共同運命、⑦対称性の複合型
線香花火をモチーフにしたディスプレイだが、火花の周りは丸いものが固まっていて「類同」。
火花においてはピンクのヨコは必ずパープルなので「共同運命」。線香花火やコーヒーカップは「対称性」があります。

d

これは、③よい連続、④閉合、⑦対称性のミックス
ディスプレイテーマはフラワー時計。

e

これは、⑥面積、⑦対称性のミックス。ビリヤードをモチーフにしたディスプレイですが、キューの先のボールがとても目立つ。これが⑥面積の応用です。

f

これは、④閉合、⑤共同運命のミックス。テーブルの木枠でディスプレイを包んでいる、大きな「閉合」だ。
そしてコーヒーカップ以外はすべてテーブルに埋まっているという共同運命です。
テーマはSDGs。

g

これは、④共同運命 ⑦対称性のミックス。
白黒反転する、という共同運命です。
コロナのグラフをモチーフにしました。

h

これは、④閉合 ⑦対称性。テーマはパーティになっています。

まとめ

今回は、デザイナーによく知られている「群化の法則」をディスプレイに応用し解説しました。
「群化の法則」は秩序の法則と行っても過言ではありません。
売場に秩序がなければ、ジャングルになってしまいます。
かといってあまり秩序がありすぎると在庫置き場になってしまいます。

ディスプレイは秩序と自然の中庸に位置させると、個性的で美的感覚に優れたものになります。
このことを常に意識して、既存のVMDメソッドと群化の法則を連動させて使いましょう。

群化の法則を会得したい方は、オンライン「センスアップセミナー」で詳しく教授しました。
興味ある方は次回ぜひご参加ください。
●センスアップセミナー ディスプレイ構成 PART2

(VMDインストラクター協会事務局)

カラフルなディスプレイ

ディスプレイ美的センスアップの秘訣

美的センスの三要素

あなたがディスプレイをつくるとします。
ディスプレイをアート作品と思っているあなたには下記の3つの要素が求められます。

  • 審美性esthetics
  • 創造性creativity
  • 演出性expressiveness

審美性について

審美性とは、見た目の美しさのことです。
女性なら八頭身、小顔、色白。
男なら逆三角形ボディの細マッチョみたいな感じでしょうか。

あなたの身の回りの調度品を見てください。
リビングの花瓶も、目覚まし時計も、下着を入れるキャビネットも審美性を感じませんか。

リビングの花瓶は鶴の首のように細くキュッと締まっていますし、目覚まし時計は左右対称の楕円形になっています。
下着入れのキャビネットは湾曲していてかわいいです。

審美性は、下記の美的形式原理がベースになっています。

  1. 調和 ハーモニー harmony
  2. 均衡 バランス balance
  3. 対称 シンメトリー symmetry
  4. 比例 プロポーション proportion
  5. 対比 コントラスト contrast
  6. 律動 リズム rhythm
  7. 階調 グラデーション gradation

詳しくは
●美的形式原理 をクリック。

美的形式原理を取り入れると審美性が増します。
例えば、先ほどの花瓶は調和と対称がよいため、審美性が感じられるのです。

売場塾の生徒作品を例に解説します。
例えば、これはフツーのディスプレイ。

これに美的形式原理のシンメトリーを加えてみます。
すると、下記の様になり、審美性が増しました。

もし、あなたの作ったディスプレイに審美性を加えたいのなら、美式形式原理を応用しましょう。

今度はコップのディスプレイ。
これも売場塾のワークショップの生徒作品。

うーん、なんかずんぐりむっくりで肥満系のディスプレイですね。
これを美しくしてみましょう。

ライザップのようにシェイプアップしました。
ドクターXみたいにきれいな八頭身ですね。
縦に長い三角構成は、りりしくすっきりとしています。

OKですか?審美性の感覚分かったと思います。
ディスプレイのシルエット、色、素材、配置などに審美性を加えると美しくなります。

創造性について

創造性とは、クリエイティブなことです。
それは他に類のない個性的なものを創り出す能力のことです。

他に類を見ない個性的なディスプレイとはなにか。
それは、「ほかで見たような気がする」ディスプレイでなくて、「こんなの、あるんだ」という、唯一無二のディスプレイを言います。

広告で言えば、こんな感じ。
デパートは普通、モデルに服を着せた写真を広告に出しますが、このモデルは服を着ていません。
「こんなの、あるんだ」という唯一無二の広告になっています。

ディスプレイの例を見てみましょう。
例えば、この陳列は遠くから見ると、サンタクロースに見えます。
とても創造的ですね。

こちらは、コップの三角構成ですが、フツーの三角構成とちがい、なんだか動き出しそう。
芋虫がもそもそしている感じがして、とても創造的です。

あなたがもし創造性のあるディスプレイをつくりたいのなら、他人をマネするのではなく、唯一無二のオリジナリティを追求するとよいでしょう。

演出性について

次に演出性なのですが、テーマやシーンの臨場感を出す能力のことです。
臨場感とは、「まるでその場にいるような感覚」を言い、下記の様なことを言います。
・まるで戦場にいるような臨場感のある映画
・遊園地でデートという臨場感があるディスプレイ
・高いビルの屋上に立っているような臨場感あるVR

演出性があるディスプレイとは、まさに「まるでその場にいるような感覚」なんです。
例えば、「遊園地でデートという臨場感があるディスプレイ」にするにはどうすればいいのか。
それには、まずマネキンに着せる服を「遊園地でデート」に合うようなテイストにすることです。

  • ドットや幾何学というカジュアルな柄の服
  • ブライトトーン、ビビッドトーンといったカラフルな色の服
  • ミッキーやキティのようなキャラクターもの
  • スカートはマーメイドスカート、フレアスカート、マキシスカートなどカジュアルなもの

などと「遊園地でデート」に着ていく商品をチョイスします。

それが終わったら、プロップスやPOPのようなディスプレイ用品で演出性を高めます。
・POPは遊園地の写真を背面パネルとして起用。
例えばメリーゴーランドとか、動くコーヒーカップの写真にする。
・プロップスは、遊園地をほうふつとする小道具にする。
例えば、風船、ハートの杖、観覧車のオブジェ、ピエロのお面などなど。

下記の缶ジュースに演出性を加えてみます。

演出的なディスプレイになりました。

お花畑を演出してみました。
香りのよさそうなジュースになりました。
これがディスプレイの演出性です。

ディスプレイに美的センスを加える要素、わかりましたでしょうか。
それが

  • 審美性esthetics
  • 創造性creativity
  • 演出性expressivenes

なんです。

当社では3か月に一度ディスプレイセミナーを行っています。
●ディスプレイセミナー
美的センスあるディスプレイを実際につくってみましょう。
日本橋の売場塾会場にてお待ちしております。(^^)

(VMDインストラクター協会事務局)