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理想的なVMD研修とは

VMDインストラクターが行うVMD研修の理想的な形とは何か?についてお話しします。
3つのパートならなります。

  • 現場研修
  • 集合研修
  • ガイドライン

ひとつひとつ解説します。

====== 現場研修 ========

現場研修のパターンは、改善点ガイダンス →チームに分かれてリバイス →発表 →評価・手直し という手順で行います。

●改善点ガイダンス
リバイス(売場の編集作業)に移る前に、VMDインストラクターは売場の写真を使って、どこが悪いのか指摘し、直し方を説明します。
52週26週の売場変更の場合は、インスタレーションのポイントを写真を使って説明します。
この時、ディスプレイ指示書があったりマニュアルやテキストがあると売場スタッフは理解しやすくなります。

●チームに分かれてリバイス
店内が広い場合は、数人のチームに分けてリバイスします。
3.4名で1カセットが作業しやすいでしょう。
デパ地下のお菓子店のような狭いところは、什器ごと、スペースごとに役割分担します。
リバイスの際、VMDインストラクターは監督係としてふるまってください。
チームに加担していっしょにインスタせずに、黙って見守り質問があったら対応します。

●発表
リバイスが修了したら、各チームに発表いただきます。
声を出して売場をどう直したかを言っていただくことが肝です。
そうすることで、売場の改善を理論的に人に伝えられる癖がつきます。

●評価・手直し
VMDインストラクターは、その発表を受けて評価、そして手直しをします。
手直しをする際、どこが悪くてどう直したらよいのかを説明しながら直します。
すると、スタッフは売場のBefore Afterを体感でき、記憶に残りやすくなります。

====== 集合研修 ========

現場研修の次は集合研修です。
これはセミナーをすればいいというものではなく、年間のスケジュールを現場研修と集合研修でどう組んでいくか、学びの仕組みはどうするかという設計から始めなくてはいけません。
VMDセミナー講師に頼んで終わり。
しかも1年に1回のセミナーをしたところでスタッフは記憶のかなたです。

集合研修は55のフレームワークを使ってそれを習得するようにカリキュラムを編成すると効果的です。
売場づくりの型を55覚える!というゴールが明確になり、回が重なるにつれ、「こんなに覚えた!」という感動がスタッフに積み重なっていきます。
モチベーションアップによいです。

現場研修と集合研修の関係は、理論を習得する集合研修、それを実践するのが現場研修です。
また、現場で問題を発掘するのが現場研修、その問題を解決するのが集合研修です。
こういう相互関係がありますので、集合研修のみ、現場研修のみというのはやめたほうがいいです。
双方をやってこそ、効果が出てきます。

VMDインストラクターは単なるセミナー講師ではなく、理論と実践をスタッフにVMDスキルを身につけさせ、売場のブランディングをキープさせるプロジェクトランナーでもある、という自覚をしてください。

====== ガイドライン ========

そしてその研修のゴールは「ブランドガイドライン」成就です。
現場研修で報告書を蓄積していき、それを編纂してガイドラインをつくっていくというスタイルがおススメで、実践的なガイドラインができます。

単にVMDの本を写してガイドラインにする、
広告会社に頼んで1か月でつくってもらう、
というやり方ではなさけないです。

自社オリジナルガイドラインは1年かかると心得、OJTの実践による積み重ねで作っていくという体制で臨んでいただければと思います。

VMD研修を含めたコンサルティングは当社では「VMD導入プログラム」というサービスで行っています。

●VMD導入プログラム

詳しく知りたい方は資料請求してくださいね。(^^)

(vmd-i協会事務局)

自店の店舗デザインはどうあるべきか

デザインとは何でしょう。ウィキペディアでは次のように定義しています。
「ある物事について、それを真に理解し、ふさわしい姿を与える。そのとき顕れた美しみを、人々はdesignと称する。」

これを、A店を新装する場合に置き換えてみましょう。
「新装するA店舗において、それを真に理解し、ふさわしい姿を考える。その結果、新しくできたA店舗表現を、人々は店舗designと称する。」
こんな感じだと思います

さて、「A店にふさわしい姿」とは何でしょうか?
ふさわしい店舗の姿というのは、店舗ブランドによって違います。
ユニクロのふさわしい姿は無印良品とは違い、スターバックスのふさわしい姿はドトールコーヒーとは違います。

ユニクロは色とりどりのにぎやかな姿であり、無印良品はシンプルでナチュラルな姿です。
スターバックスはモダンで落ち着く姿ですが、ドトールはさっと入ってさっと出るピットインのような姿です。
だから小売店を営んでいるあなたは、自店のふさわしい姿とは何か?から店舗デザインを考えなければいけないのです。

よく見る有名店舗のデザインを模倣しても仕方がありません。
そのような行為はあなたのお店の顧客を遠ざけるでしょう。
今回は、自店の店舗デザインをどうやって決めるか、お教えします。
それによって、店舗デザインを施工会社に丸投げする常態から脱却できるのです。

さて、VMDとはビジュアルマーチャンダイジングの略で、直訳すると「品揃えを視覚化する」ノウハウです。
実はVMDにおける店舗デザインは、通常思いつく建築デザインよりも定義が広いんです。
店頭・床・壁・天井・什器のデザインだけではない、下記の4分野のデザインを担います。

  1. ショップデザイン分野 →店頭・床・壁・天井・什器・照明など、店の構造物全般
  2. マーチャンダイジング分野 →商品のパッケージデザイン・包装紙・ショッピングバッグ、場合によってはプロダクツデザインそのもの。商品に関わるもの全般
  3. ディスプレイ分野 →マネキンや展示台などのディスプレイ用品、花や壺などの装飾品、ウインドウディスプレイ、商品群の佇まいなど、展示・陳列全般
  4. ロモーション分野 →ポスターや値札などのPOP、ビジョン、テーブルの腰巻・柱巻、バルーンなどの販促ツール全般

早い話が、店舗にやってくるお客様が見るものすべて、と考えていただければ。
したがって店員のユニフォーム、店員そのものも店舗デザインの一部であり、ここではプロモーション分野に入ります。
VMDを知ることによって、店舗デザインの監修ができる。自店にふさわしいデザインを決めることができるのです。

次に、店はコンセプトでできていることをお話しします。

店舗をハコです。
お客様はハコに買い物にやってきます。
そのハコのデザインを買い物しながら体感するのです。
床・壁・天井という構造物ひとつひとつに感心するわけではありません。
ハコの中の雰囲気を体感するのです。
きれいなパッケージの商品がたくさん並んでいる佇まい。
手書きPOPが林立している賑わい。
品のある店員の立ち振る舞いとユニフォーム。
これら目に見えるすべてのデザインが、場の雰囲気としてお客様に感動を与えているのです。

では、自店のハコのデザインをどうやって決めればいいか?
ズバリ店舗コンセプトを決めればよいです。
「わが店舗はどんな店舗なのか」という概念を言葉にしたもの、それが店舗コンセプトです。
あなたが店の経営者、バイヤー、SV、店長、店員、販促担当、商品開発担当という店舗に関わりのある方なら、店舗コンセプトを決めるのは必須です。

例えば、スターバックスは「第三の場所」という店舗コンセプトがあります。
家でも職場でもない第三のリラックスできる場所である、という意味です。
だから、店内は落ち着いたたたずまいになっているはずです。
ダークトーンの木のイスとテーブル、照度を落とした照明、漆喰の壁、そこに掲げられている絵画、そしてバリスタの威勢のいい声。目に見えるものすべてが第三の場所としてふさわしいデザインになっています。

このようにコンセプトは店舗デザインを決める考え方のもとになっているのです。
ほとんどのブランドショップにはコンセプトがあります。

例えば下記です。

  • SHIPS DAYSのコンセプト「眺めのいい日々と、居ごこちのいい服」
  • フランフランのコンセプト「好きな「いろ」で生きよう。笑おう。」
  • アフタヌーンティのコンセプト「spice of a day」

このコンセプトをテイスト、そしてトーンアンドマナーに意訳する作業をしましょう。
店舗コンセプトが決まれば、あとはそれをもとに前出の4分野のデザインに落とし込めばよいです。

ですが店舗コンセプトをそのまま業社に言っても伝わりません。
ここでクエスチョン!
例えば、あなたがPOP制作を外注するとします。

どのようにしたらよいか。下記からひとつ選んでみてください。

  1. なるべく優秀なデザイナーにデザインを丸投げする
  2. トーンアンドマナーをしっかりデザイナーに提示し監修する
  3. いつもの施工会社に頼んで店舗デザインに沿ったPOPを作成してもらう

答えは2です。

そう、トーンアンドマナーをデザイナーに提示しなくてはいけないのです。
トーンアンドマナーとはデザインのルールのことです。

「うちのコンセプトは「第三の場所」だからそのようなデザインにしてほしい」とPOPデザイナーに言っても伝わりません。
トーンアンドマナーを伝えないと店にふさわしい姿のPOPにはならないのです。

一番上の図を見てください。
これは店舗(ハコ)の構成要素です。
まずハコの左外の「デザインテイスト」に注目してください。
デザインテイストとは次のようなものです。

お客様は買い物をして出るまで店内で短時間を過ごします。
店内で目にするものはPOPだけでなく、商品だったり什器だったり壁紙だったりします。
スタッフも目にするし、テーブルのディスプレイも目にします。
この時、テイストというお客様の感じ方があり、「自然でナチュラル」「クールでモダン」「元気でにぎやか」「フレッシュでみずみずしい」などお店によっていろいろな感じをお客様は受けています。
これを司っているのがデザインテイストであり、デザインテイストはお客様の目に見えるすべてのものが発している感じや気持ちのことです。
その「感じ」をお客様は五感でハッシ!と受け止めるわけなのです。

チェーン展開しているあなたのブランド店舗もテイストを決めなければいけません。
それが空間ブランディングという行為で、同じ店なのに一方は都会的で一方は田舎っぽいとなると、妙な感じになります。
ブランドの世界観はないに等しいです。
無印良品やユニクロはどこに行っても世界観は一緒であるように、あなたのお店のデザインテイストは規格化しなければいけないのです。

VMDインストラクターはブランド空間の監修役なので、チェーン店全体のデザインテイストを統一して保つ役目を担っています。
チェーン店においては、POPはPOPデザイナー、商品はプロダクツデザイナー、床・壁・天井は店舗デザイナーなどと役割分担されています。
ところがデザインにルールがなくて、各デザイナーが好きなようにそれぞれ作ってしまったら、店内はいろいろなデザインでごった煮になるのです。
そうなると、お客様にとってどの店に行ってもテイストが違うため、店のブランド感はなくなり、よろず屋で買い物している感覚になってしまいます。
そうならないために、VMDの専門家はデザイナーにきちんとオリエンしなければいけないし、監修しなければいけません。
まずはあなたの店舗のデザインテイストを設定し、トーンアンドマナーを決めましょう。

最後に、トーンアンドマナー事例についておはなしします。
「屋根裏部屋のような秘密基地」とか「離島の人のいない自然観」とか「重厚で伝統的だがモダン」のような表現と模写でストーリーボードをつくり、デザインテイストをデザイナーに提示できるようにすします。
その上で、下記をチェックする。

「離島の人のいない自然観」の場合では、

  • 「離島の人のいない自然観」テイストが什器デザインに表れているか。
  • 「離島の人のいない自然観」テイストがPOPデザインに表れているか。
  • 「離島の人のいない自然観」テイストが定数・定量に表れているか。
  • 「離島の人のいない自然観」テイストがディスプレイに表れているかどうか。

POPひとつとっても、「離島の人のいない自然観」テイストの下、書体はどうあるべきか、レイアウトはどうあるべきか、POP用具はどんなものがよいのか、考える必要があります。

POPデザイナーにデザイン発注してできたデザインを校正する場合は、デザインがトーンアンドマナーに沿っているかチェックします。

施工会社の設計士と改装について打ち合わせするときは、壁紙の柄、照明の明るさ、什器のデザイン、床のパターンがトーンアンドマナーに即しているのか監修しなければいけません。
これを「トーンアンドマナーのフィルターを通してデザインを見る」といい、店内デザイン物を精査する際、このフィルターを通します。

だいたいわかりましたでしょうか、あなたの店のデザインの決め方。
「どんなお店にするか」明確化するコンセプトが決まらないと、デザインテイストも決まらず、トーンアンドマナーもつくることができないのです。

もしあなたの店舗にコンセプトがなかったら、まずはとりあえずでいいのでコンセプトを決めましょう。
でないと、「私はモダンなデザインが好きだから、こんな什器にする」みたいに経営者の好みで決めることになりかねません。

もしあなたの会社にVMD担当がいないのならば、担当を育成しましょう。
店のデザインの指南役をつくるのです。
担当はVMD知識に加えてデザインセンスを身につけ、設計図面を読めたり、コピーを書けたり、色のコーディネート術を身に着けたりと、デザインについての知識やスキルは磨いた方がよいです。
でないとデザイナーや設計者と会話できないどころか、デザイン丸投げになってしまうからです。
またそのような人材育成の余裕がない場合は、VMDインストラクターという職業人がいるので利用してほしいです。
文字通り、あなたのお店のデザインを教えてくれます。

(vmd-i協会事務局)

売上を上げるには完全リバイス!

リバイスとは売場の再編集の意味で、店内の売場を短時間で改善することです。

●リバイス

リバイスの活用目的は下記があります。

  • 52週の期の変わり目の売場改編
  • 生産性をよくするための売場改善
  • スタッフOJTなどの実習
  • ガイドラインのBefore After事例作成
  • 改装・新装のインスタレーション

百貨店、ドラッグストア、スーパー、カー用品店、バラエティストアなど、ほとんどのお店は毎週売場が変わっています。
これを52週MDサイクルといいますが、このタイミングで小売店・卸・メーカーは売場をリバイスしています。

リバイス作業には、当社フレームワーク55のうち5科目37課目を活用しています。
5科目のうち4科目とは下記です。

  • ゾーニング
  • IP
  • PP,VP
  • POP

メーカー、インショップの場合は下記の1科目が加わります。

  • GP,AP

今度は部分リバイスと完全リバイスの違いをお話しします。
リバイスはこの2種類に分かれます。

まずは部分リバイスからお話しします。
部分リバイスとは、店舗全体をリバイスせずに店舗の一部分を直すことです。
特に下記の場合です。

・フロアの中~小分類を直す。
例えば、百貨店なら下着・靴下などの洋品売場、おもちゃ店ならガールズトイ売場、バッグ店なら旅行鞄売場、家電店なら洗濯機売場を直すような感じです。

・1スパン、1カセットを直す。
アパレルならパーティスタイルのカセットのみ、デニムカセットのみ、カー用品店ならカーオーディオの1スパンのみ直すといった具合です。

この作業、2、3時間で終わることが多いので、VMDインストラクターも頻繁にOJT研修に取り入れています。
ラックの移動が容易な雑貨店、加工食品売場、生活用品店、おもちゃ店はゾーニングから直すことができます。
また作業がディスプレイ中心になるので、やって楽しく、売場のBefore Afterを見て違いがよくわかるので現場スタッフ教育に多大に貢献します。

今度は全体リバイスをお話しします。

全体リバイスとはフロア全体をリバイスすることです。
とはいえ、せいぜい50坪までです。
ゾーニングから直すため時間がかかり、1日6時間ではこの面積が限度だからです。
百貨店、GMS、スーパーはフロア全体が150~300坪もザラですので、すべてを1日でリバイスできません。
その場合は閉店リバイスといって2日~1週間はフロアを閉業せざるを得ません。
その場合は、OJTに利用するというより改装のための作業という位置づけになります。

OJTで行う完全リバイスは50坪以下の売場を利用しています。
50坪の売場でも30名前後の受講生を揃えれば、ゾーニングから作業できます。
量販店や百貨店だけでなく、SCに入居しているテナントも50坪以下の店が多いので、テナントショップを対象に全体リバイス研修をするケースは多いです。

さて、ここからが本題です。
部分リバイスと完全リバイス、どちらが売上が上がるかについて話します。
それは完全リバイスの方が圧倒的に売上が上がるということです。

最近、過去8年間の毎年の上位5位のべ40社のお得意様のリバイス結果を振り返りました。
結果とは単純に売り上げが上がったか、下がったかです。

完全リバイスした会社のうち、売上が上がった会社は92%。
上がらなかったまたは結果を聞いていない会社は8%でした。
部分リバイス方式でコンサルした会社は、完全リバイスほど売上アップは顕著ではありませんでした。

このことから部分的に売場を変えるよりも、一気に全フロア変えてしまった方が売上に貢献する可能性が高いということが言えます。

それはなぜか。
それは部分リバイスだと作業はディスプレイ中心になるからです。
部分的にディスプレイだけ直しても売上が上がるケース顕著ではありませんでした。

全体リバイスは、店舗診断→ゾーニング→IP→PP,VP→POPという流れを1日で行う作業になります。
(メーカーの場合はそれにGPとAPが加わります)
特に店舗診断とゾーニングが抜けているところが、部分リバイスが売上に貢献できない大きな理由なのでは、と思っています。

当社の店舗診断は、フロアのすべての売場の写真を撮ってそれを分析して改善点を列記する手法なので、重なりがなく漏れがありません。

●店舗診断

対して部分リバイスは、その場で売場を見てすぐ直す作業となり、写真でじっくり分析することもありません。
だから漏れがすごくあるんです。
After写真を見た後、「あちゃー、ここも直せばよかった」と思うことが少なくありません。

また、ゾーニングを直さないということは、フロアのVMD分類、導線、マグネット売場、什器レイアウトを直さないということになります。
これらが売上に与える影響は強く、ここに手を入れないとなると効果は半減するのは明らかです。

ここがVMDビジュアルマーチャンダイジングは、ディスプレイだけの技術ではないという所以です。
VMDは、下記の4分野を見直してこそ、売上が上がるものだと実感できました。

  • ショップ空間
  • 品揃えと展開
  • ディスプレイ
  • 体験販促

詳しくはこちらをご覧ください。
●VMDとは

だいたいわかりましたでしょうか。
部分リバイスと完全リバイスの違い。
売上を期待する場合は、完全リバイスをしてくださいね。
もディスプレイだけで終わろうとはせず、ゾーニングから直さなければいけないということを念頭においてください。
メーカーの場合はぜひコーナー編成、つまり什器レイアウトから始めてくださいね。

一方、部分リバイスは簡単にできるディスプレイを中心とした作業なので効率がよく、少人数でもできます。
スタッフ研修にぜひ利用してください。

●注
・GP,APとは

・GPグランドプレゼンテーション

・APアーチクルプレゼンテーション

(vmd-i協会事務局)

ショップコンセプトがお店の品揃えを決定する

VMDの学校、売場塾が唱えるVMDのあり方は、ショップコンセプトをベースとしています。
これを「コンセプト・オリエンテッド」と言っています。

商品は、小売店というハコの中で売られています。
ドラッグストアというハコ、スーパーというハコ、コンビニというハコ・・・。
ブランドで言うと、無印良品というハコ、ユニクロというハコ、伊勢丹というハコ・・・。

品揃えとは、マーチャンダイジング(MD)といい、「ハコの中に何を置いて売るか?」という考え方です。

この品揃え、売れれば何でも置いていい、というわけにはいきません。
ハコはブランドというものでできていて、ブランドはブランドコンセプトからできています。

例えば、東急ハンズは「ここは、ヒント・マーケット」というブランドコンセプトを唱えています。
●東急ハンズのコンセプト

東急ハンズにいつもに個性的でおもしろい商品が並んでいるのは、このコンセプトがあるからです。
ここに普通のトイレットペーパーは売ってないですよね。
あるとしたら、おもしろいトイレットペーパーです。
●東急ハンズのトレペ

そのお店らしい商品が並んでいないと、そのお店のファンであるお客様はがっかりしてしまいます。
普通のトレペを買うならここに来る必要はありません。
安いドラッグストアに行くでしょう。

上の図を改めて見てください。
ファネル(じょうご)があります。
これは「ショップコンセプトファネル」といい、品揃えはじょうごを通して行うという、フレームワークを示しています。
「そのお店らしくない」商品を仕入れて棚に並べてしまう行為は、そのお店が好きで来るお客様をがっかりさせてしまい、次からは来なくなることを意味します。
しっかりショップコンセプトをつくり、そのじょうごを通して商品を仕入れるのが正解です。

こんな話がありました。
2001年、無印良品は売り上げ減で苦しんでいました。
38億の赤字に陥ったのです。
そんな時、「うちはモノトーンや生成りの服が多いから、赤や青のビビッドな服を売れば、売上は回復するのではないか」ということで、カラフルな服を仕入れ始めました。
すると、来店したお客様は「こんなの無印じゃない」と踵を返して、ますます遠ざかる要因となったのです。

そんな時、松井忠三という人が良品計画の社長になり、店を一からやり直そしました。
松井さんがやったことで有名な話は、コンセプトに合わない服の在庫を焼却炉に持っていき、山のように盛り上げ社員のいる前で燃やしてしまったことです。
それを見た社員は涙を流し「二度とこんなことはすまい」と誓ったのでした。

その後、無印良品はコンセプトに忠実な商品を仕入れ、運営マニュアルをしっかりつくってV字回復したということでした。
詳しくは「無印良品は仕組みが9割」というベストセラー本があるので読んでみてください。

私たちVMDインストラクターもこれと同じような考えです。
店舗診断をする際は、「コンセプトに合わない商品は取り扱わない」というアドバイスをしています。

●オーバルリンクの店舗診断

世の中の店は、コンセプトと違う商品が店内にゴロゴロしています。

ある時、
売上に苦戦しているおもちゃ店のVMDインスタラクターをしていました。
そのお店は、コンピュータを使いながら子供を教育していくという、PC玩具に特化したお店としてオープンしました。
ところが売上は芳しくありませんでした。
そこで、当社が「世界中から子供に役に立つおもちゃを」というコンセプトに沿って店名を変えVIを変え、VMDを見直して店舗をリスタートしました。
ショップコンセプトに沿って品揃えを半分以上変えたのです。
するとあっという間に月間売上は2倍になりました。

同店の品揃えに関して言うと、コンセプト通り電気おもちゃの商品は取り扱いをやめ、世界上から知育玩具をたくさん集めたのです。
PCの代わりに木や粘土のおもちゃが増えていきました。
それと並行して、ゾーニングや定数・定量、PP・IPなどMDP(ディスプレイ)やSD(ショップデザイン)も変えたのです。
この成功を踏まえてその後、このお店はチェーン店を増やしていったのです。

いかがですか、この話。
私たちのVMDインストラクターはこんな事例でいっぱいです。
品揃えをカットして売り上げが増える。
それは、ショップコンセプトをきっちり見直して品揃えを明確にするからに他なりません。

(vmd-i協会事務局)

箱出しフェイシングで商品はわかりやすくなる

フェイシングとは、商品を一目瞭然にわかる置き方をいいます。
店内を歩いているお客様は一瞬棚を見ますが、その時に商品の特徴が一目瞭然にわからないと、次の売場にさっさと行ってしまいます。

しかし正しいフェイシングをすると、お客様が商品をパッと見た瞬間に下記の商品特徴がわかるので、立ち止まって商品を見てくれます。

  • 柄がわかる
  • シルエットがわかる
  • 使い方がわかる
  • 開いた状態がわかる
  • 閉じた状態がわかる
  • コーディネートがわかる
  • ブランドがわかる
  • 商品名がわかる
  • 世界観がわかる
  • 機能がわかる
  • 効果がわかる

フェイシングを怠って、お客様をスーッと通り過ぎさせてはいけません。

さて、箱出しフェイシングとは、商品を箱から出して陳列または展示することを言います。
世の中、ほとんどの加工商品は箱や袋の中に入っています。

  • お土産店のお菓子、調味料、飲料、酒
  • 玩具店のおもちゃ、プラモデル
  • 文具店のギフトカード、フレーム、アルバム
  • 薬局の薬、化粧品、サプリメント
  • スポーツ用品店のダイエット器具

お菓子を例にとってみましょうか。
箱や袋の中に入っているお菓子は、そのままでは見えません。
透明袋のお菓子の場合でも、袋の中でお菓子ひとつひとつが小包装されています。
お菓子を袋から出してフェイシングしないと何が入っているのか、お客様はわかりません。

菓子袋や菓子箱をそのまま陳列してもわからないのです。
単純な話、
・ドーナッツが入っているのがわからない。
・バームクーヘンが入っているのがわからない。
・マドレーヌが入っているのがわからないのです。

なので、菓子店、またはメーカーはサンプルを用意して、皿に盛りつけるなどして「何が中に入っているのか」わかるようにする必要があります。
デパ地下のGケースでは、お菓子の盛り付け例は頻繁にディスプレイされていますが、お土産店では箱をどさっと置いただけの状態になっています。
その場合は、アクリルフィギュアケースを利用してサンプル展示するなどしなければいけません。

玩具店の場合は、おもちゃのパッケージが透明塩ビのブリスターケースになっているので、何が箱に入っているのかわかります。
ブリスターケースでない場合でも、箱に中身の写真が施されています。
しかし、ここで安心してはいけません。
この場合、箱をフェイスアウトして中身を見せたり、箱の写真を見せなければいけないのです。
平置き、つまりシェルビングして置いているお店は、お客様にとってただの在庫置き場にしか見えないでしょう。

クリスマスや誕生日のギフトカードもそうですね。
カードだけ棚に陳列しても、わかりません。
カードを袋から出し、カードを開いて立体的なオブジェになるということを見せなければいけないのです。

クリスマスカードを袋から取り出して、飛び出すクリスマスツリーをディスプレイすれば、
お客様はそれを見て「わあー、このクリスマスカードすごーい」ということになります。

さて、箱出しフェイシングするスペースがない!!と悲鳴を上げている方は、演出POPか商品説明POPを掲示することをお勧めします。
演出POPとは、商品を魅力的に見せるPOPのことです。
見えないフィナンシェを皿にきれいに盛り、美しいテーブルに置いて写真を撮ります。
それをA5POPに掲示するのです。

すると、それを見たお客様は、美しいお菓子のシズル感に感銘して、「おいしそう」と商品を購入する気になるのです。

次に、薬局の薬や化粧品のフェイシングはどうあるべきでしょうか。
薬の場合は、ピルを箱から出して展示しても意味はないですよね。
お客様にとって、薬の形状はあまり関心ないからです。
かぜ薬などは箱出しフェイシングは必要ないでしょう。

では何が必要か。
それは、薬のパッケージをよく見えるようにして陳列することに他なりません。
というのは、薬はパッケージ自体がPOPになっているからです。
効果、効能、用途などがパッケージにイラスト入りで書かれていて、商品説明POPと同じ働きをしているからです。
POPレールでパッケージを隠さないこと、これにつきます。

化粧品の場合は、化粧水や乳液などのびん自体がきれいなフォルムになっているので箱からびんを出してフェイシングします。
ただし、化粧品の場合も薬と同じく、「効果が期待できるか」にお客様の関心はいくので、効果・効能を商品説明POPに集約して掲示します。
この場合は、びんの横に商品説明POPをA5~A6POPサイズで置くとよいでしょう。

スポーツ用品店のダイエット器具も薬や化粧品と同様です。
器具がどのようなものか、箱から出して展示してください。
そして、どのようにトレーニングしたらよいのか、器具を試す体験スペースをつくるとさらによいです。
そして、POP。これを使えば本当に痩せるのか?というのがお客様の最重要課題なので、効果・効能の商品説明POPを設置します。

だいたいわかりましたでしょうか。
箱出し・袋出しフェイシング。

特にお土産屋さんにアドバイスしたいです。
平素からたくさんの外国人が押し寄せています。
お菓子の箱を平置きで積むだけにしないでくださいね。
ニッポンの個性的なお菓子を箱出し、袋出しして、魅力的に見せてください。

ラグビーワールドカップ、そしてオリンピック。
この機を逃さず、ニッポン繊細なVMD、発揮させてください。

なお、フェイシングに興味ある方は、ディスプレイ・ワークショップを時々行っていますので、ぜひ遊びに来てください。
お待ちしております。

●VMD売場づくりのディスプレイセミナー

(vmd-i協会事務局)