当社は3か月に1回、ディスプレイセミナーを日本橋で開催していて、VP,PP,IPをお教えしていますが、意外と覚えきれていない方がいます。
そんなわけで、今回はVPとPPの定義についてお話しします。
まずはディスプレイ用語、VP,PP,IPの説明をします。
●VP(ビジュアル・プレゼンテーション)
店前を歩いているお客様を立ち止まらせる大きな店頭のディスプレイのこと。
●PP(ポイント・プレゼンテーション)
店内のお客様を回遊させる、比較的大きなディスプレイのこと。
●IP(アイテム・プレゼンテーション)
お客様が選択購入しやすいように陳列されている商品ディスプレイのこと。
さて、VPを定義してみましょう。
「VPはフロア商品を代表するディスプレイ」
「VPはフロアの打ち出し商品のディスプレイ」
「VPは店舗の商品を代表するディスプレイ」
「VPは店舗の打ち出し商品のディスプレイ」
と定義1を書いてみました。
次に
「VPの展示商品はフロアのIPから選択する」
「VPの展示商品はフロアのIPの中になければいけない」
「VPの展示商品は店内のIPから選択する」
「VPの展示商品は店内のIPの中になければいけない」
と定義2を書いてみました。
すると、VPに展示している靴は、IPとしてこのフロアのどこかになければいけません。
VPに展示しているバレエのドレスも、IPとしてフロアのどこかになければいけません。
今度は、PPの意義1を書いてみます。
「PPは売場の商品を代表するディスプレイ」
「PPは売場の打ち出し商品のディスプレイ」
次に、PPの意義2を書いてみます。
「PPの展示商品は売場のIPから選択する」
「PPの展示商品は売場のIPの中になければいけない」
とすると、この売場のPPはOK。
これもOK。
これもOK。
これはダメです。
これもダメです。
どうしてダメなのか、わかりますか?
詳しく解説します。
コーヒー器具売場を見ていきましょう。
確かにPPとしている上部の四角い箱に入った商品は下段のIPにあります。
しかし、PPにあってIPにないものもあります。
それは、一番上の中央の箱に入っている丸いサーバーです。
これが下にないんです。
ですので、PPとしては定義に外れるので×。
丸いサーバーを下げるか、IPに丸井サーバーを入れます。
次に、紳士服売場を見てみましょう。
まずオブジェがありますが、これはPPではありません。飾り物です。
シャツがたたんで置いてありますが、下段にはありません。
ですからPPとしてはバツです。
あなたはこう思うでしょう。
「そんな固いこと言わないで、見逃してやって」。
いえいえ、見逃すことはできません。
見逃すこと イコール 定義は意味をなさない・・・ことになるんです。
定義はそんなに甘くないことは、新型コロナウイルスのガイドラインを見れば一発でわかります。
例えば、コロナの第3.4ステージの定義は下記です。
新規感染者数は1週間で人口10万人あたり15人以上ならステージ3、
25人以上ならステージ4。
「あー、今日東京都は25人だった。せっかくずっと24人だったのに。
見逃して。第3ステージのままにして。一人くらいいいじゃない」
と言ったあなたに対して、国民の怒り心頭は頂点に達することでしょう。
そうなんです。
コロナ対応のガイドラインは何のためにあるかと言うと、国民の命を守るためにあるんです。
VMDのガイドラインは命にかかわらないかもしれないのですが、あなたの担当しているブランドの命にかかわること間違いなしです。
ガイドラインによる定義をうやむやにしたまま、店舗を運営していくとやがてはショップブランドの瓦解につながります。
さて、改めてPPの定義を見てみます。
PPの意義1。
「PPは売場の商品を代表するディスプレイ」
「PPは売場の打ち出し商品のディスプレイ」
PPの意義2。
「PPの展示商品は売場のIPから選択する」
「PPの展示商品は売場のIPの中になければいけない」
これもまだうやむやな言葉がありました。
それは「売場」という言葉です。
売場と言う定義があいまいだとやっぱり、PPはフロアにあるものならなんでもござれになってしまいます。
なので売場の定義をしっかりつくることが必要です。
・ここでいう売場とは、MDグループを指します。
・MDグルーブとはテーマに基づく商品群のことで、
壁面なら5スパン以内、島什器なら3スパン以内とする。
・例えば、スポーツアパレルならば、ランニング、トレーニング、サッカーなどをMDグループと言う。
・例えば、ドラッグストアならば、風邪薬、コンタクト用品、メイク器具などをMDグループという。
こうすると、「売場」の定義が明確になっているので、6スパンを超えたIPはPPとして展示してはいけない。
自動的に、他のMDグループに属する商品はPPに入れてはいけない。
ということになります。
図をご覧ください。
棚の赤い部分は別MDグループの什器ですので、そこの商品が5スパンのMDグループのPPに入ってしまうと×ということです。
なのに、「他の売場の商品もPPに入ってしまっているけど、まあいいでしょう」
とVMDインストラクターのあなたが指導してしまうと、もうこの時点で定義は崩れてしまうし、ガイドラインは意味をなさなくなってしまいます。
そして店舗スタッフも「PPに使う商品は店内にあるものならなんでもいいんだ」ということになり、ガイドラインが意味ないものになってしまうんです。
たかがガイドライン、されどガイドライン。
これがあるおかげで、コロナ禍のオリンピックもスムーズに遂行できるんです。
そして、ガイドラインは更新していくということも忘れないでください。
「どうしてもこのままではうまく売場を運用できない」ということがあれば、協議の上、改定するといいでしょう。
すると、スムーズに行かなかったところが改善されていきます。
だいたいわかりましたか。
VMDのディスプレイはあいまいなところがあるので、都度定義をしっかりつくってあいまいさをなくしていくことが必要です。
(VMDインストラクター協会事務局)