1.ディスプレイとは何か
今日はディスプレイ制作5つのコツを教えましょう。
本来はサブテーマを入れて6つのコツなのですが、初心者向けにわかりやすくお教えします。
VMDインストラクターの方もばっちり復習してくださいね。
ディスプレイとは狭義で言う「展示」のことです。
ディスプレイ担当者は店内に展示物をいろいろな形でつくっていると思います。
- Gケースの中のお菓子
- ウインドウのマネキン
- テーブルの上の雑貨
- 棚の上の帽子
- 突き出し棚のメガネ
など、陳列物と違って、展示物は直接お客様がショッピングカゴに入れてレジに持って行くということはないけれど、
- 今こんなんが旬ですよ
- これを買えばばっちりです
- こんなことで困っていませんか
- これを贈った相手は喜ぶはず
などなど、展示物を使っていろいろ提案してきます。
そう、ディスプレイって提案するんです。
なので、別名プレゼンテーションと私たちVMDプロは呼んでいます。
そんな提案する展示物を魅力的につくるにはどうすればよいか。
それにはディスプレイ制作5つのコツを覚えるとよいです。
2.ディスプレイ制作5つの要素
コツを要素と言い換えましょう。
ズバリ、ディスプレイ制作5つの要素は下記です。
- テーマ
- 商品
- カラー
- 構成
- ディスプレイ用品
この5つを使ってあなたの作った店内展示物をもっと魅力的にすることができます。
VPやPPも見違えるようになります。
それではサンプルを見ながら解説していきます。
下記のディスプレイを見てください。
スーパーの店員さんがインスタントコーヒーのテーブルディスプレイをつくりました。
テーマは「3時のカフェオーレ」です。
店員さんはこう言いました。
「女の子がカフェオーレを飲みながら、旅行の話をしている雰囲気でつくりました」
うーん、なんかヘンですね。
確かにシンメトリーになっていてダイナミックだけど、わかりにくいです・・・。
VMD担当であるあなたは、そう思うはずです。
そこで、どこがどう悪くてどう直せばいいのか、前述の5つの要素を使って瞬間的に考えます。
これを想起と言います。
あなたもこの想起、やって見てください。
もう写真を一度じっと見てください。
この5つの要素のうち、どれが悪いですか。
- テーマ
- 商品
- カラー
- 構成
- ディスプレイ用品
どんな要素が悪いと想起されますか。
答えは~。
- 商品
- 構成
- ディスプレイ用品
でした。
ディスプレイ制作5つの要素のうち、この3つを直せばディスプレイは完璧になります。
逆に言うと、テーマとカラーはクリアしているということです。
ディスプレイを見るとき、5つに分解して見るということを忘れないでください。
ひとつひとつ解説していきます。
●テーマ
お客様がディスプレイを見て感じること、それがテーマです。
この場合のテーマは「3時のカフェオーレ」ですので、このディスプレイを見てお客様はそう感じるか?
感じなければディスプレイを感じるように直さなければいけません。
この場合、カフェオーレの箱は見えてコップもあるので、「3時のお茶」くらいは感じそうです。
なので、まあOKです。
※テーマのことをもっと知りたい方は下記を読んでください。
○VP,PP,IPについて
●カラー
ディスプレイのキーカラーは3色以内で行うのが原則です。
これは服のコーディネートに由来してまして、マネキンに服を着せるときは、下記の3色でまとめるとコーディネートがうまくいくんです。
・ベースカラー ・・・ベースとなる一番面積が大きい色
・アソートカラー ・・・次に面積が大きい色
・アクセントカラー ・・・いわゆる差し色のこと
この写真を見ると、
・ベースカラーはパープル
・アソートカラーはオレンジ
・アクセントカラーはグリーン
こんな感じでまとまっているので、カラーはOKでした。
それでは直さなければいけない商品、構成、ディスプレイ用品を見ていきましょう。
●商品
商品のフェイスがきちんと見えているか?商品は適正数量か?
これを念頭に入れて写真を見てください。
すると、あらら。
カフェオーレの顔がよく見えないですよね。
目立つのはコップばかり。
コップは小道具なのにずいぶん目立っています。
これでは本末転倒。
コップの代わりにカフェオーレやクッキーを目立つように置きます。
これをフェイシングといいます。
フェイシングは商品特徴がわかるように置く。これが鉄則です。
※フェイシングを詳しく知りたい方はこちら。
○土産店・キャラクターショップの売場づくりのコツ
●構成
ディスプレイ構成のことを言います。
VMDのディスプレイはアート性がなければいけません。
「展示物」というくらいですから、ゴミや物置きのように見せるわけにはいきません。
アートを感じさせるには、審美性・演出性・創造性が備わっていなくてはいけません。
審美性とは短時に言うと美しいこと、人間なら美人のことです。
美人はプロポーションがいいですよね。
同じようにディスプレイが美人だとプロポーション、すなわち構成がいいんです。
美人を見て道行く人が振り返るように、「おやっ」と思ってディスプレイを見てくれるんです。
改めて写真を見ると、このディスプレイは残念ながら美人ではありません。
構成が左右対称になっていますが、グライダーのように横に間延びしています。
もっとキュッとタイトにセクシーに構成し直さなければいけません。
※構成について深く学びたい方は下記をクリックしてください。
○ディスプレイ美的センスアップの秘訣
●ディスプレイ用品
ディスプレイ用品とは小道具のこと。
ライザーやプロップスという装飾品のことを言います。
このディスプレイの場合は、カフェオーレとクッキー以外はすべてディスプレイ用品です。
コップやぶどう、ノート、テーブルクロスがそうです。
つまり売り物ではありません。
なのに、コップが堂々と「私を見て」と言っています。
商品であるカフェオーレやクッキーをのけ者にして自分だけ目立っています。
また、後ろに立てかけてあるノートも何のためにあるのか、存在意義さえわかりません。
またノートということもわからないかもしれません。
もうわかりましたか。
この場合の「ディスプレイ用品」とは、それらを適正に使っていないということでした。
※プロップスについて詳しく知りたい方はこちら。
○ディスプレイの装飾品「プロップス」とは
3.アタマの中の引き出しを使ってディスプレイを魅力的にする
さて、お待たせしました。
それでは、下記3つの要素を直したディスプレイを披露します。
今度はBefore Afterで比べて見てください。
もうわかりましたね。
どうディスプレイを直したか解説します。
●商品
商品の顔がくっきり見えるようになりました。
Beforeではコップが主役でしたが、Afterでは商品が主役になりました。
さらに、小包装のカフェオーレと箱がセットで展示されているので、2種類の味があるというのがわかりやすくなりました。
●構成
グライダーのように横に広がっていたディスプレイが、キュッとタイトにまとめられています。
同じシンメトリーでも、Beforeがメタボな構成になっているのに対し、Afterでは胸と腰がキュッとしまった美人ディスプレイになっているのがわかります。
しかもAfterでは、展示物が4つのカタマリになっていて、それぞれ三角構成になっています。
とてもりりしい姿になりました。
※三角形の構成はなぜよいか。それはこちら。
○ディスプレイ、なぜ三角形がよい?
●ディスプレイ用品
Beforeでは、プロップスのコップの向きがバラバラだったのに対し、Afterではきちんと前を向いています。
また、ブドウは皿に置きました。
Beforeで背後に立てかけていたノートもそれとわかるように手前に置き直しました。
これで美人ディスプレイは完成です。
だいたいわかりましたか。
ディスプレイ制作の5つの要素。
これがアタマの引き出しに入っていれば、どんなPPもVPも魅力的にすることができるんです。
VMDインストラクターはこうした引き出しをアタマの中に持っているので、ディスプレイを5秒見たら、どこが悪いかチェックでき、ディスプレイをつくった店員さんに教えることができるんです。
このディスプレイ要素の引き出しは、全部で55あるVMDの引き出しの一つにすぎません。
引き出しを使って売場を直すことを「フレームワーキング」と言います。
詳しくは下記をご覧ください。
4.今度はあなたの番!
さて、ディスプレイ制作5つの要素がわかったところで、復習です。
同じスーパーマーケットの店員さんが、今度はインスタントコーヒーのテーブルディスプレイをつくりました。
展示商品はスティック状のインスタントコーヒーで、マイルド味とビター味の2種類あります。
店員さんはテーマを「オフィスのコーヒー」として作り、スーパー近くのビジネス街のサラリーマンに買ってもらうことを想定しました。
でも、このディスプレイ、なんかヘン。
あなただったらどう直す?
下記のディスプレイ制作の5要素を使って店員さんに直し方を教えましょう。
まずはどの要素を直すべきか答えてください。
- テーマ
- 商品
- カラー
- 構成
- ディスプレイ用品
答えは~。
- 商品
- 構成
でした!!
直したものはこちら。
改めてBefore Afterを見ながら解説します。
Beforeを見てください。
「なんだか雑然としているなあ」と思うことでしょう。
でも、店員さんに「キレイにしててくれ」と言っても、店員さんはどうキレイにしたらいいのかわかりません。
そこであなたはこうアドバイスします。
「テーマはなんとなくわかるし、ディスプレイ用品もサラリーマンぽくていいです。
色も黒とグレーと赤で3色以内にまとまっています」
「でも、商品と構成がよくないですね」
「商品に関してはBeforeを見てください。半分の商品が寝てます。
他のパッケージやコップに隠れて商品が見えていない箇所もありますよ。
パッケージはきちっと立ててデザインと商品名が見えるようにしてください」
「今度は構成についてお話しします。
Beforeを見ると、商品がバラバラに置かれています。
雑然としていて美しくないですよね。
まずは、ビター味、マイルド味、ビターとマイルド味のセット、スティックのみ、の4つに展示をカタマリとして分割してください。
4つのカタマリはタイトに三角構成してくださいね。
そして、カタマリとカタマリの間を5.6cm隙間をつくってください。
その隙間のことをネガティブスペースと言います。
そうしたら、箱の向きを斜めに向かせて繰り返し展示してください。
これをリピテーションといいます」
こうアドバイスすると、Afterになりました。
だいたいわかりましたか。
ディスプレイ制作の5つの要素。
これらをあなたのアタマの中の引き出しに入れれば、いつでもキレイでわかりやすいディスプレイをつくることができるんです。
ディスプレイもっとうまくなりたい、と思うあなた、ぜひオンラインセンスアップセミナーにお越しください。
今月のセンスアップセミナーは8/29(木)11時から。
タイトルは、「VMDの基礎知識」です。
どなた様もお待ちしております。(^^)
(VMDインストラクター協会事務局)